◇絵でみる需給動向◇
米農務省 (USDA) の調査によると、 97年1月1日時点の牛の総飼養頭数は、 前 年同期比で2.2%減、 また実数では228万頭減少し、 1億121万頭となった。 90年に底を打ったキャトルサイクル (肉牛経営の収益性の変化がもたらす、 循 環的な牛群消長) は、 91年以降、 牛群拡大局面に入り、 その後も増加傾向で推移 してきた。 しかし、 96年1月時点の調査で、 更新用肉用繁殖雌牛が前年同期を4. 6%、 30万頭下回ったこと等から、 関係者の間では、 96年中にキャトルサイクル はピークに達すると見られていた。 今回の調査結果では、 関係者の予想したとお り、 総飼養頭数はピークを過ぎて減少しており、 キャトルサイクルが下降局面に 転じたことが明らかになりつつある。
飼養頭数の内訳についてみると、 肉用牛部門については、 肉用繁殖雌牛 (経産 牛) は前年同期比2.7%減少して3,428万頭となり、 また、 更新用の肉用未経産牛 (227kg以上) は、 同2.1%減少して605万頭となった。 これは、 96年の飼料価格の 高騰と肥育素牛価格の低迷が肉牛経営の収益を圧迫し、 雌牛の淘汰が進んだこと を示している。
一方、 肥育用去勢牛 (227kg以上) は、 前年同期比2.4%、 42万頭減少したが、 肥育に向けられる未経産雌牛が2.7%増の1,022万頭となったことで、 肥育用に向 けられる牛の合計は、 0.5%、 15万頭の減少にとどまった。 これは、 96年に飼料 の高騰と素牛価格の低迷で、 未経産牛を更新用に維持することが嫌われたことに より、 肥育用仕向けが増えたことによるものと考えられる。 なお、 肉用牛の牛群は、 全体の約8割を占めていることから、 キャトルサイク ルの下降局面入りは、 すでに動かしがたいものとみられる。
乳用牛部門についても、 乳用雌成牛 (経産牛) が前年同期比1.4%減少し928万 頭に、 更新用の乳用未経産牛が1.6%減少し404万頭となった。 これも飼料価格の 高騰にともなう零細経営の脱落が進み、 酪農家戸数が減少していることや、 一頭 当たりの乳量が増加していることなどを背景としていることから、 長期にわたり 牛群の減少傾向が続くとみられている。 (注)1)500ポンド以上 2)500ポンド未満の雌牛、雄牛、種雄牛 資料:USDA「Cattle」
96年の子牛生産は、 前年比で1.6%減、 また実数では63万頭減少して、 3,959万 頭となった。 96年1月から6月の子牛生産頭数が前年同期比1%の減少にとどま ったのに対して、 7月から12月の期間では前年同期比3%減となっており、 下期 に入って減産傾向が一層明瞭になっている。 97年の子牛の生産頭数については、 繁殖用経産牛の飼養頭数が前年同期を2% 下回ったことから、 96年よりもさらに低い水準となるものと関係者は見ている。 また、 このことから96年には低迷していた肥育素牛価格は、 今年は前年を上回り、 堅調に推移するものと見込んでいる。
子牛生産頭数 資料:USDA「Cattle」
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