◇絵でみる需給動向◇
台湾の豚肉小売価格の上昇が続いている。 主要都市の小売価格は、 近年の極め て高水準の肉豚卸売価格にもあまり左右されず、 長期にわたって、 安定的に推移 してきた。 これは、 仕入れコストの上昇を、 短時間では小売価格に転化しない現 地の商習慣により生じているものであるが、 昨年の中頃からは、 小売価格の上昇 が顕著になっている。 昨年のロース、 もも・かた及びバラの小売価格の対前年比の動向を見ると、 1 〜5月の平均がそれぞれ、 104.7%、 107.3%及び104.0%であったのに対して、 6〜11月の平均はそれぞれ、 113.9%、 117.4%及び120.4%と、 5/6月を境と して、 いずれも大幅な値上がりを示した。 また、 台湾では、 内蔵類の人気が高く消費量も多いが、 これらの小売価格の上 昇幅も顕著となってきており、 特にハツ (心臓) 価格の対前年比は、 1〜5月平 均の97.1%から6〜11月平均の125.5%へ大きく上昇している。 さらに、 ガツ (胃)、 マメ (腎臓)、 タン (舌) などにも、 程度の差こそあれ、 同様の上昇傾向 が見られる。
このような小売価格の急上昇には幾つかの要因が考えられるが、 先ず、 一般論 としては、 台湾の経済が引き続き好調を続けていることから、 他の消費材と同様、 インフレ傾向による価格上昇圧力が高まっていることが挙げられる。 次に、 豚肉部門個有の要因としては、 肉豚卸売価格の高騰が長期にわたって継 続し、 それが一般にも浸透してきたことから、 値上げに対する消費者の 「理解」 を、 ようやく得られる状況となってきたことが挙げられる。 なお、 従前から、 小 売業者が、 容易にはコスト上昇分を販売価格に転化しないのは、 台湾では豚肉価 格への消費者の注目度が高いため、 小売店が消費者との信頼関係の維持を極めて 重視しているからであるとされている。
昨年後半からの小売価格の引き上げは、 現実には、 わが国の豚肉輸入緊急措置 (セーフガード) の発動を契機に肉豚卸売価格が下降に転じ、 仕入コストが下が り始めた局面で起こっている。 これは、 それ以前に長期間続いた、 肉豚卸売価格 高騰により収益の悪化が想像以上に厳しいものであったため、 そうした局面の変 化にもかかわらず、 小売業者が、 販売価格を引き上げざるを得ない状況に追い込 まれたものと考えられている。 なお、 肉豚卸売価格の低下が今後さらに長期化すれば、 小売価格値下げ問題が 浮上してくることになるが、 そうした状況の変化に、 小売業者が柔軟に対応でき るか否かでもって、 その 「信頼関係の維持重視説」 の妥当性が測られることにな ろう。
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