◇絵でみる需給動向◇
タイ大蔵省から公表された統計 (速報値) によると、 96年の鶏肉の輸出量は、 対前年比8.8%減の137千トンとなり、 92年の175千トンをピークとして、 4年連 続の減少となった。 しかし、 その一方で、 鶏肉および鶏肉調整品の国内生産量は、 いずれも対前年比8.9%増と順調に増加している。 ここ数年、 タイ産鶏肉の仕向 け先が、 冷凍鶏肉による輸出から鶏肉調整品による輸出や国内市場向けへとシフ トしていたが、 今回公表された統計は、 この傾向が更に急速に進んでいることを 示している。
過去5年間のタイ産冷凍鶏肉の輸出先上位5カ国への輸出数量の推移は下表の とおりであるが、 日本向けが最も多く、 ついでドイツ向けという傾向は5年間変 化が見られていない。 しかし、 シェアについてみると日本向けは年々確実に減少 している。 また、 3位以下の国は、 95年以前と比較すると、 96年には大きく変化 した。 最近では、 EU向け輸出が、 対前年比64.9%と大幅に増加し、 このうち、 オ ランダ、 英国向けの輸出は、 それぞれ3位、 4位に躍進した。 この要因としては、 牛海綿状脳症 (BSE) の影響でEU域内の鶏肉需要が大きく伸びたこと、 タイ産鶏 肉の最大の競争相手国である中国からEUへの鶏肉輸出が、 衛生基準等の問題から 一時ストップしていたことが挙げられる。 業界では、 EU向け輸出の拡大に大きな 期待を持っているが、 今後の中国の出方次第では、 日本向けの輸出と同様に、 後 退を余儀なくされる可能性もある。 タイ冷凍鶏肉輸出先上位5カ国 注)( )内の数値は、シェア(単位:%)
飼料原料の輸入に関して、 2つの大きな動きが見られた。 第1に、 大豆ミール の関税が、 現行の10%から5%に引き下げられたことである。 これは、 5月6日 に公表され、 同日から本年12月まで適用されることとなった。 第2に、 業界が待 ち望んでいたゼロ関税のトウモロコシ輸入枠が5月16日に発表された。 ただし、 輸入期間は6月30日までとされており、 さらに、 今回、 公表された20万トンの輸 入枠が昨年の輸入実績である28万トンに比べて少ない事から、 今後早い時期に何 らかの追加措置の発表があるものと期待されている。 ただし、 関係者の間では、 今回の一連の飼料原料の関税引き下げは、 実質上の 効果という面からみると、 タイ産冷凍鶏肉競争力の決定的な回復には繋がらない ものと見られている。
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