米国の鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○ブロイラー価格と生産動向



● 卸売価格は2年ぶりで軟調傾向へ


 97年5月のブロイラー卸売価格 (丸どり、 12都市平均) は、 約2年ぶりで前年
比がマイナスに転じ、 前年同月比6%安の58セント/ポンド (約150円/kg)とな
った。 

 丸どり価格は、 過去2年間、 一貫して前年水準を上回る高値水準で推移してい
たが、 今年は春から夏にかけての需要増に伴う価格上昇が見られず、 下落に転じ
ることとなった。 

 5月の卸売価格を部位別に見ると、 好調な需要に支えられて高値で推移してき
た国内消費中心のむね肉が、 一転して前年同月比16.5%安と大幅に下落し、 165
セント/ポンドとなった (ボンレス、 北東部)。 また、 輸出向けを中心とするも
も肉も、 輸出需要の低迷により96年末から前年水準を下回って推移していたが、 
前年同月比10.6%安の48セント/ポンドとなった (ホール、 北東部)。 

● 輸出減と生産増が価格軟化の要因


 このように価格が軟調に転じた要因としては、 これまでの高価格に貢献してき
た輸出が低迷していることや、 生産の拡大により、 供給過剰傾向が表面化してき
たことが挙げられる。 

 近年、 好調な卸売価格を支えてきた輸出については、 最大の相手先であるロシ
ア向けが、 昨年末から、 通関手続きや表示問題の紛糾により停滞したのを始めと
して、 第2位の中国 (香港経由を含む) 向けも、 衛生問題から一部が停止された
といわれている。 これら2国は、 合せて輸出全体の6割を占めているため、 その
輸出不振は価格動向に大きな影響を及ぼすものとなっている。 なお、 第3位の対
日輸出も、 中国からの輸出急増の影響を受けて、 前年に比べ大幅に減少している。 

 一方、 生産については、 96年秋以降、 飼料穀物価格の下落に伴う飼料コストの
低下により収益性が改善したことから、 増加傾向を示している。 ちなみに、 97年
1月から5月までの生産量 (可食重量ベース、 骨付き) は、 前年同期に比べて1.
2%の増加となった。 

● 加工業者は黒字経営を維持


 生産拡大をもたらした要因としては、 収益性の改善により、 生産者 (加工業者) 
の増産意欲が高まったことが挙げられる。 

 加工業者の純利益 (以下同じ) の推移を見ると、 96年3月は、 衛生問題に絡ん
でロシア向け輸出が一時停止したことを受けて赤字に転じたが、 その後は輸出の
再開とともに再び増益傾向が続いている。 97年5月には、 卸売価格は前年水準を
下回ったものの、 純利益については3.75セント/ポンドとなり、 依然として黒字
を維持している。 また、 97年1月から5月までの平均純利益は、 6.82セント/ポ
ンドで、 前年同期を116.8%上回り、 2倍以上の高収益となっている。 

 

● 98年にかけて生産拡大傾向が続く見込み


 米農務省によると、 ブロイラーの生産量は、 97年上半期は前年同期に比べて2.
2%増、 また、 下半期は前年同期比6.0%の増加で、 年間では、 前年比4.1%の増
加になると見込んでいる。 また、 98年についても、 前年に比べ6.5%の増加にな
るとし、 生産の拡大傾向は続くと予想しているが、 今後、 価格が本格的に軟調に
転じた場合には、 その影響が及ぶことも懸念されている。 

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