◇絵でみる需給動向◇
ニュージーランドの家畜改良公社によると、 96年上半期 (1〜6月) の同国の 酪農場平均売買価格は、 前年同期に比べてほぼ横ばいの、 13,612NZドル/ha (0. 3%の上昇) となった。 横ばいになったとはいえ、 酪農場の価格は、 近年、 特に 大幅に上昇しており、 過去5年間では、 約2倍に上昇したことになる。 この大幅 な上昇の背景としては、 主にアジア向けを中心とした乳製品の輸出の伸びに支え られて、 高水準の乳価が実現したことにより、 酪農産業の収益性が、 全般的に良 好であったことが挙げられる。 なお、 ここにきて価格上昇がほぼ止まったのは、 その価格水準が、 酪農経営の収益状況からみて、 限界に近づきつつあることを示 唆するものであると考えられる。 酪農場価格・生産者乳価の推移 資料:家畜改良公社「Dairy Statistics」
また、 ニュージーランドの酪農は、 基本的に放牧主体であるが、 酪農場の1ha 当たりの平均売買価格を他の放牧農場の価格と比較してみると、 肉牛肥育用放牧 農場に比べると4.6倍、 またその他の放牧農場に比べると、 10.9倍と高水準にな っている (図1)。 これは、 酪農場が、 他の放牧場に比べて質の高い牧草地であ ることを反映している。 ちなみに、 ニュージーランドにおける酪農場面積は約18 6万haで、 同国の農地面積全体の11.2%を占めている (図2)。 また、 酪農場の面 積は、 10年前と比較して約35%も増加しており、 同国の農地全体の面積が約22% 減少したこと、 また、 羊の放牧農場面積が同じく27%減少したことからみると、 その増加が際立っている。
一方、 酪農場価格の大幅な上昇は、 新たに酪農場を購入する者の資金負担を大 幅に増加させている。 これほどまで高い水準に達したことにより、 新規参入者、 あるいは規模を拡大しようとする酪農家にとって、 大きな負担となっていること は間違いない。 このことは、 長期的にみた場合には、 同国の酪農産業活力を減衰 させ、 その発展にとってマイナス要素になるのではないかと懸念されている。 事 実、 相対的に土地の値段が安いオーストラリアのタスマニア州などへ進出すると いう、 いわゆる 「酪農移民」 が増加しており、 担い手流出という点で注目されつ つある。
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