米国の牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


酪農協同組合と酪農・乳業



● 酪農協が8割を超える生乳を取り扱う


 米国の酪農においては、 農家が組織する酪農業協同組合 (Dairy Cooperatives、 
「酪農協」) が重要な役割を果たしている。 酪農協は、 各農家で生産された生乳を
集荷し、 乳処理工場へ販売すること、 また、 自前の乳処理工場で余剰乳を処理す
る目的で設立され、 現在は、 全米の生乳生産量の8割を超える生乳量を扱ってい
る。 

表1 酪農協数の推移と取扱生乳量

 資料:USDA/Agricultual Cooperative Service

 近年、 米国では、 伝統的な酪農地帯であるウィスコンシン州などの中西部地域
における、 深刻な後継者不足等による家族経営農家の酪農経営からの離脱や、 カ
リフォルニア州やアリゾナ州など、 主に西部地域における大規模経営の発展など、 
酪農生産に大きな構造変化が起こっている。 このような状況の下で、 酪農家数の
減少に伴って統廃合などを通じて酪農協の数も年々減少し、50年頃には2,000を超
えていたものが、 直近の95年では、 その10分の1程度の247となっている。その後
も酪農協の合併等が続いていることから、 現在では酪農協数はさらに少なくなっ
ているものとみられる。 

● 組合員数による格差が大きい構造


 米国の酪農協は、 組合員数が50名程度の地域的な小規模なものから、 全米第1
位のミッドアメリカのように、 1万2千人を超える組合員で構成されている大規
模な全国的組織をもつものまで、 規模における格差が大きいのが特徴である。 

 なお、 本年4月には、 その生乳取り扱い量で、 いずれも上位10位以内に入る酪
農協であるランドオーレイクとアトランティックとが合併に合意し、 全米をカバ
ーする酪農協が誕生することとなるなど、 酪農協の合併は昨今でも頻繁におこな
われている。 

表2 上位10酪農協の取扱生乳量

 資料:E.A.Jaenke 「An Overview of US Dairy Industry」

● 上位4酪農協が3割の生乳を取り扱う


 次に、 産業の集中度合いを生乳取り扱い量でみると、 上位4酪農協が、 酪農協
全体が取り扱う生乳の30%以上を取り扱っている。 また、 上位20酪農協では、 米
国の全生乳の60%以上、 また酪農協全体の72%以上を占める構造となっている。 
上位20酪農協とそれ以外の200酪農協の間には、 経営規模において大きな格差が
みられ、 後者は、 非常に小規模な酪農協群となっている。 

 上位20酪農協は、 自己の乳処理工場による粉乳製品の生産において、 全米の生
産量の約80%のシェアを占めている。 また、 全米で販売される飲用乳の約15%を
製造・充填している。 なお、 酪農協が製造する飲用乳は、 全て上位20酪農協によ
るものである。 しかし、 アイスクリーム、 カッテジチーズやヨーグルトのような
ソフトタイプの製品の製造における上位20酪農協のシェアは、 比較的少なくなっ
ている。 

● 酪農協の分布


 最後に、 酪農協の分布を見ると、 中西部と北東部地域に多く集中しており、 中
南部地域が少ない。 米農務省によると、 州別の酪農協数は、 95年には、 ニューヨ
ーク州に61酪農協があり、 以下、 ミネソタ州で48、 ウィスコンシン州で35となっ
ており、 伝統的な酪農地域に多いことがわかる。 


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