◇絵でみる需給動向◇
EU最大の豚肉輸出国であるデンマークの豚枝肉卸売価格 (各週の市場参考価格 を平均したもの、 以下同じ) は、 5月に入ってから急上昇 (前月より30.3%の上 昇) し、 14.42クローネ (約254円)/kgとなった。 これは、 対日輸出の増加や、 牛海綿状脳症 (BSE) 問題による牛肉からの代替 需要に伴うドイツ、 イタリア向けなどの輸出の増加で価格が堅調であった前年同 月に比べても、 それをさらに30.4%上回る大幅な上昇となっている。 また、 これ は、 過去5年間で最高値となった、 96年9月の12.31クローネ (約217円)/kgを も上回る水準である。 豚肉価格は、 昨年秋以降、 今年の初めにかけて、 牛肉消費の回復に伴って低下 し、 デンマークがEU委員会に民間在庫補助制度の発動を要請する事態となったが、 その後の状況は、 一転して正反対の市況展開となった。
この価格急上昇の要因は、 今年に入ってから、 EU有数の輸出国であるオランダ や同じく最大の豚肉生産国であるドイツ、 また生産量が第3位のスペインで発生 している豚コレラの影響が深刻化したことにより、 清浄国であるデンマークに対 する豚肉の引き合いが急増していることにある。 特に、 オランダでは、 防疫上の措置として、 EU委員会の決定に基づく介入買上 げが行われ、 既に130万頭以上の肥育豚、 子豚のと畜処分が行われたことが、 大 きく影響しているものとみられる。
しかしながら、 このように急上昇していたデンマークの豚肉価格は、 5月後半 に入り落ち着いてきた模様である。 5月第4週の価格は、 14.69クローネ (約258 円)/kgと、 第3週と同等の水準となった。 また、 EU全般でも、 5月第3週をピ ークに価格が下降に向かい、 第4週には、 オランダ、 ドイツ、 スペインをはじめ として多くの国で前週より下落した。 なお、 デンマーク豚肉輸出機構連合 (DS: と畜加工組合の上部団体) の6月第1週の枝肉基本価格 (50〜109.9kg、歩留まり 59%) は、 13.30クローネ (約234円)/kgと前週に引き続き下落し、 ピーク時(5 月第2週および第3週) に比べると、 5.7%の低下となった。 その理由としては、 (1)ドイツでは、 EUの常設獣医委員会が同国の生体豚移動 制限区域の解除を決定するなど豚コレラの発生が沈静化したこと、 (2)オランダ やスペインでも5月後半に入り、 移動制限区域以外での豚コレラの発生が見られ ないこと、 (3)近年、 域内向けの豚肉輸出が増加しているスウェーデンやイギリ スなどからの輸出が、 現在の豚肉供給不足を補い始めていることなどが挙げられ る。 また、 こうしたことに加え、 先ごろ発表された97年4月期のデンマークの豚セ ンサスによれば、 同国の豚の総飼養頭数は、 対前年同期比3.4%増の約1千70万 頭となった。 このうち、 繁殖用雌豚頭数は同3.9%増、 また、 未経産豚頭数は、 同5.7%増と、 それぞれ前年同期より増加しており、 肉豚供給が今後とも、 増加 傾向にあることを示すものとなっている。 したがって、 デンマークの豚肉価格は、 5月をピークに今後は徐々に低下していくものと見込まれる。 表 97年4月期デンマーク豚センサス 資料:イギリス食肉家畜委員会 「European Market Survey」 注:( )内は、内数
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