◇絵でみる需給動向◇
米農務省 (USDA) は、 5月9日、 メキシコ・ソノーラ州からの冷蔵、 冷凍豚肉 の輸入を、 7月8日以降許可する旨の規則を発表した。 米国は、 これまでメキシコを豚コレラ清浄国として認定していなかったため、 同国からの豚肉輸入を禁止してきた。 しかし、 北米自由貿易協定 (NAFTA) およ びガット・ウルグアイ・ラウンド (UR) 合意に基づき輸出許可を求めるメキシコ 政府からの要請を受け検討した結果、 ソノーラ州からの豚肉に限って輸入を認め ることとした。 今回の 「解禁」 は、 今年5月のクリントン大統領の訪墨を機に合 意されたものである。
USDAは、 ソノーラ州からの豚肉輸入を解禁する理由としては、 (1)同州内にお いて、 85年以降、 豚コレラが発生していないこと、 (2)メキシコ国内の他の州に おいても、 90年以降豚コレラが発見されていないこと、 (3)ソノーラ州が他州か らの生体豚および豚肉の流入を禁止していること、 (4)同州の衛生管理体制が整 備されていること等が挙げられている。 しかしながら、 USDAは、 同州から輸入することのできる豚肉は、同州で肥育、と 畜されたもので、 豚コレラ感染の危険性が高い他の地域の豚と接触しておらず、 また同州から搬出されたことを証明する、 メキシコ政府の証明書の添付を義務付 けるとしている。
メキシコの豚肉生産は、 主として西部、 中央部、 北西部を中心に生産されてお り、 これら地域を合せると、 総生産量のおよそ8割を占めているといわれている。 ソノーラ州は、 このうち北西部に位置し、 米国のアリゾナ州、 カリフォルニア州 と国境を接している。 USDAの調べによれば、 同州では、 年間120万頭の肥育豚が 生産されており、 そのうち35%は生体豚のまま国内向けに出荷され、 残りの65% はと畜・加工されて国内外に出荷されるとしている。 関係者の間では、 今回の 「解禁」 措置で、 生産量の10%から20%程度が米国向けに輸出されると見込まれ ている。
米国の豚肉輸入相手先は、 第1位がカナダ、 第2位がデンマークとなっており、 両国合せると総輸入量のおよそ9割を占めることになる。 品目を見ると、 カナダ からは冷蔵のテーブル・ミートを、 デンマークからは冷凍もも肉を中心に輸入し ている。 ソノーラ州からの輸入が開始された場合、 主要輸入国の順位に変化は見 られないと思われるが、 同州がカリフォルニア州などの米国西部の大消費地に近 いことや、 メキシコの豚肉生産が増加傾向にあることなどを考慮するならば、 今 後米国の豚肉業界に与える影響は少なくないと考えられる。
元のページに戻る