総輸出額急増の下で、増減交々の畜産物輸出 (中国)




● 1−4月期、 総輸出額は27%増加



 関税総局によれば、 96年1−4月期の総輸出金額は、 500億USドルを超え、 前
年同期比では27%の増加となった。 昨年の中国の輸出は、 生産コストの上昇や自
国通貨元レートの上昇などによりその伸び率が鈍化したが、 97年に入ってからは
急に反発している。 その背景には、 近年の急成長による生産急増により、 一般工
業製品を中心に国内市況が低迷傾向となって、 輸出志向が高まったことがある。 
また、 懸案となっていた、 増値税 (付加価値税) の還付手続きが円滑化されたこ
とも輸出拡大の追い風となっている。 

 なお、 現在政府は、 最大課題である国有企業改革を中心とした経済構造改革に
取り組んでおり、 経済的基盤強化の一環として、 輸出振興に今まで以上に力を入
れる方針である。 

〈1−4月期 主要品目の輸出量〉

 (注)1 資料:中国通関統計
    2 * 輸出実績が表示単位以下であることから−とした
    3 # 前年の輸出実績がほとんどないことから−とした

● 畜産物、 家きん肉の急増に対して豚肉は急減



 この間の輸出急増に貢献したのは、 一般工業産品であるとされているが、 産業
分野別輸出動向の詳細が不明であるため、 輸出全体に対する農産物、 就中、 畜産
物の貢献度を測ることは困難である。 そうした中でも、 月次の通関統計により明
らかとなっている主要な畜産物、 飼料穀物の品目別輸出動向をみると、 次のとお
りとなっている。 

 目立った動きとしては、 家きん肉 (内訳は示されていないがブロイラー中心) 
の輸出が急増し、 引き続き好調を維持しているのに対して、 かって大きな比重を
占めた豚肉が、 生産急増による市況低迷期を経て、 昨今では需給均衡に近づいた
ことから、 輸出が大幅に減少している点が挙げられる。 

 また、 牛肉は、 沿海部を中心に需要が増え続けていることから、 輸出量が年々
減少する一方で、 輸入は増える傾向にあるとされており、 1−4月期では、 輸出
実績がほとんどなくなっている。 

 一方、 畜産との関連で飼料穀物をみると、 その太宗を占めるトウモロコシは、 
昨年の記録的な大豊作 (推定:前年比5%以上の増加) により、 需給が大幅に軟
化しており、 97年年初からは、 ほぼ2年ぶりに輸出が再開されている。 

● 97年の輸出、 引き続きブロイラーがリードか



 中国の農産物輸出は、 畜産物・飼料穀物以外にも、 油糧種子や野菜など広範に
わたっている。 その中でも、 近年所得向上にともない需要が急増している畜産物
は、 生産は増え続けているものの、 全般的には輸出余力が低下しつつあるとみら
れる。 

 そうした状況下で、 当面、 畜産物輸出の主力となるものは、 引き続きブロイラ
ーを中心とした、 家きん肉と考えられる。 ブロイラーは、 生産の伸び率は以前ほ
どでないものの、 内臓・その他の副生物が高値で国内取引されるという商品特性
から、 その分、 正肉の輸出価格競争力を高めることが可能で、 国際競争力は大い
に有利となっている。 また、 その輸出の大半を占める対日輸出では、 輸送距離の
面で有利であると同時に、 それ故、 増え続ける冷蔵品輸出では競争相手がいない
という点もまた、 大きな利点である。 

● 冷凍・レトルト食品の伸びに注目



 なお、 ブロイラーを除いて、 全般的に 「素材」 としての畜産物の輸出は減少傾
向となっているが、 食肉業界関係者は、 高付加価値を求める近年の風潮から、 冷
凍・レトルト食品類の生産と輸出が急増していると指摘している。 したがって、 
食肉の輸出動向を考察するうえでは、 これらの製品に含まれる肉類の量を軽視す
べきではない。 

 それらの調理済み (又は半調理) 食品類の生産量や含まれる肉量を推計するこ
とは、 食品生産や貿易統計の現状からは困難であるが、 市場動向をみるうえでの
重要性は、 今後、 益々高まってゆくとみられる。 


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