タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○タイの鶏肉需給



● 鶏肉生産は増加基調


 タイ農業協同組合省が公表した統計によると、 1月のブロイラーの生産量は、 
対前年同月比28.6%増の66.0百万羽となり、 ひなのふ化羽数の増加に呼応した大
幅な増産となった。 また、 当月のひなふ化羽数は、 68.8百万羽、 対前年同月比10
8.4%となり、ここ数カ月の伸び率20%台に比べると低いものの、 大きな伸び率と
なった。 これにより、 96年10月から実施した生産調整の効果が薄れつつあり、 今
後は、 生産量の増加が見込まれている。 

 一方、 4月の国内鶏肉卸売価格 (成鳥1kg当たり) は、 ソンクラン (水掛け祭
り) などの需要により、 1kg当たり28バーツ (速報値)、 前年同月比103.7%と堅
調であった。 当該卸売価格は、 生産量が96年6月以降、 前年を大幅に上回ってい
るにもかかわらず、 同年3月以降、 ほぼ前年を上回って推移している。 

● 鶏肉輸出は不振が続く


 また、 96年11月の鶏肉輸出数量は、 12,812トン、 前年同月比87.2%となり、 中
国、 ブラジルからの日本向け輸出の増加の影響等により、 依然として減少傾向で
推移している。 そのうち、 日本向け輸出数量は、 9,378トン、 前年同月比 87%と
引き続き大幅な減少となっている。 一方、 EUへの輸出数量は、 2,567トン、前年同
月比130%と大きく拡大している。 相手国を伸び率が大きい順にみると、オランダ
が596トン、 202%、 英国が571トン、 181%、 ドイツが1,377トン、 104%と続いて
いる。 この増加は、 牛海綿状脳症 (BSE)の影響などによる牛肉から鶏肉への継続
的な消費のシフトなどが、 要因となっている。 

 他方、 鶏肉調整品の輸出については、 日本向けを中心に順調に伸びている。 96
年における日本のタイからの輸入実績は、30,771トン、 前年比127.1%と引き続き
大幅な伸びとなった。 

● 飼料用トウモロコシの輸入が数量割当に


 このような鶏肉国内生産の増加に伴い、 業界は、 生産コストの上昇により国際
競争力を失い、 中国、 米国、 ブラジルに日本市場のシェアーを奪われているとし
て、 商業大臣に対して、 トウモロコシの0%関税の輸入を早急に実施するよう強
く要求していた。 しかし、 96/97年において国内産トウモロコシの豊作により価
格が低迷したため、 国内産の売り渡しが完了するまで、 0%関税による輸入の実
施を遅らせることが実施予定日の間際になって決定された。 トウモロコシの輸入
に関しては、 輸入時期を国内産の端境期に当たる2月20日から6月30日までに限
った上で、 国内産の価格が 4.5バーツ以上となった場合には、 一律に関税率0%
が適用されることとなっている。 

 ところが、 タイ商務省は、 5月6日、 国内産トウモロコシ1kg当りの価格が、4.
5バーツを下回っているとして、1)本年のトウモロコシの輸入を数量割当てにする
こと、 2)その割当て数量を WTOへの約束数量である52,648トンとすること、 3)当
該輸入に20%の関税を適用することを公表した。 これにより、 本年のトウモロコ
シの輸入は、 6月30日までの期間に52,648トンを上限として実施されることとな
った。 

 これに対し、 業界では、 今後の鶏肉消費の拡大及び世界市場での鶏肉の競争力
の回復等を図るための割安な飼料用トウモロコシの確保などを勘案すると、 年間
30〜40万トンの輸入は必要とみているため、 この数量ではとても今後の需要を賄
いきれないことから、 近い将来、 何らかの追加措置等の決定があるものとの期待
を寄せている。 

 ちなみに、 前年度のトウモロコシの輸入割当数量は55万トン、 輸入実績は28.1
万トンであった。 また、 政府は、 97/98年のトウモロコシの生産について高収穫
品種の使用、 作付け面積の拡大などにより、 前年の4.39百万トンから4.53百万ト
ンへと増産になると予測している。 


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