◇絵でみる需給動向◇
EUでは、 今年に入ってから、 主要な生体豚輸出国であるオランダとEU最大の豚 肉生産国であるドイツなどで豚コレラが発生し、 特にオランダを中心として、 そ の流行が続いている。 このため、 EUの豚肉価格は、 3月以降、 それまでの低迷か ら一転して上昇傾向となり、 季節的な需要の増加も加わって、 今後は、 さらに上 昇する気配を示している。 4月のEU平均豚枝肉卸売価格 (市場参考価格、 以下同じ) は、 前月より11.4% 上昇して170.5ECU (約24,600円)/100kgとなったが、 これは、 牛海綿状脳症 (BS E) 問題による代替需要により価格が上昇し始めた、 前年同月よりも、 さらに10. 0%上昇したことになる。 特に、 オランダの価格は急上昇しており、 4月には176.2ECU (約25,400円)/1 00kgと、 前月よりも26.8%の大幅な上昇 (対前年同月比では、 21.0%) となった。 また、 ドイツでも、 191.6ECU (約27,600円)/100kgと前月より16.6%の上昇 (対 前年同月比では、 15.7%) となり、 その他の加盟国でも、 ギリシャを除き、 軒並 み価格は上昇傾向にある。 なお、 EU委員会は、 この価格上昇傾向に対応して、 5月6日付けで豚肉 (冷凍、 冷蔵) の一部の品目に対する輸出補助金の交付を一時停止することを決定した。
オランダでは、 5月に入っても、 依然として豚コレラの発生が続いており、 沈 静化に向かう兆候がみられない状況にある。 EU委員会が防疫対象地域の生産者救 済のために決定した同国の介入買上げ (買上げ費用はEU委員会が7割、 加盟国が 3割を負担、 なお、 買い上げられた豚はと畜処分され、 食用には供しない。)の頭 数は、 当初、 肥育豚35万頭、 子豚45万頭の合計80万頭とされたが、 その後 268万 頭に増加された。 なお、 最大の豚飼養地域である北ブラバンド州ブレダ地区など では、 約100万頭の豚がと畜処分された。 さらに、 4月中旬には、 生産量がフランスに匹敵するスペイン (96年は約 215 万トン:暫定値) でも、 フランス国境に近いカタロニア地方の東部で、 豚コレラ の発生が確認された。 同国では、 発生地域の50万頭の生体豚の移動制限措置が取 られたが、 EU委員会は、 併せて、 肥育豚13万2千頭、 子豚6万頭の介入買上げを 決定した。 これに対して、 ドイツでは、 豚コレラは既に沈静化する傾向にあり、 豚飼養頭 数が最大であるニーダーザクセン州などの生体豚の移動制限区域は、 その後、 縮 小に向かっている。 また、 肥育豚10万頭、 子豚4万5千頭が予定された介入買 上げは、 4月初めまでで停止されたが、 その買上げ実績は、 それぞれ約4万頭、 約6千6百頭にとどまった。
このように、 豚コレラの影響が深刻化し、 ほぼEU全域で価格上昇傾向がみられ る中で、 今後は、 域内・外ともに最大の豚肉輸出国であるデンマークの豚肉の供 給能力が注目される。 先ごろ発表された97年2月期の同国のセンサスでは、 繁殖 用雌豚の飼養頭数は、 対前年同期比6.1%増の約120万頭となっており、 依然とし て強い増頭傾向が続いていることが示された。 したがって、 デンマークの肉豚供 給能力が、 今後、 さらに拡大することは確実である。 また、 イギリスの繁殖用雌豚の飼養頭数は、 96年12月期のセンサスで3%の増 加が報告されたが、 同国の今年度の豚肉生産量は、 対前年比7%増加すると予測 されている。 既に、 イギリスでは、 豚コレラの発生後、 特にドイツやフランスな どへの豚肉輸出が増加しており、 EU全体の豚肉供給不足を一部補う役割を果たし ている。 今後のEUの豚肉市況の展開を予測する上では、 これらの国の豚肉供給の 拡大が、 需給のひっ迫傾向をどの程度緩和させるかが、 カギとなろう。
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