台湾の豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○口蹄疫発生の余波



● ほぼ全域に拡大したが、 沈静化の兆しも


 台湾の口蹄疫の被害が、 さらに拡大している。 口蹄疫は、5月13日の段階で、台
北市、 基隆市および離島の澎湖県を除く、 全国の5,899農場で発生が確認され、感
染が認められた豚総数は90万頭、 また防疫目的でと畜処分された豚は 366万頭に
達しており、 総飼養頭数の約3分の1に当たる豚群が既に失われたことになる。 
また、 現地報道によれば、 今後の発生状況によっては、 と畜処分頭数は、 最終的
には450〜500万頭に上るとも推測されている。 

 しかしながら、 口蹄疫は、 発生直後は暫くの間、 西・南部を中心に大流行した
ものの、 東部3県の発生はそれぞれ1例のみであり、 かつ他の地域についても、 
新たな発生件数は減少傾向にあることから、 行政院農業委員会 (農業省に相当) 
は、 依然として終息の時期については判断しにくいものの、 口蹄疫の流行のヤマ
は越えたのではないかとみている。 

● 肉豚価格、 口蹄疫発生以前の水準へ


 口蹄疫発生後、 肉豚の肉豚卸売価格 (生体100kg当たり) は、発生が見られなか
った東部3県の市場を除き、 4月上旬にはほぼ全ての市場で千元台の水準に暴落
した。 しかしながら、 と畜処分急増による上場頭数の減少と相次ぐ市場閉鎖によ
って肉豚の供給量が減少したこと、 また、 口蹄疫発生以降、 敬遠していた消費者
が、 次第に豚肉消費に回帰し始めたことから上昇に転じ、 5月中旬の時点では、 
全ての市場で4千元台後半で推移している。 この価格水準は、 3月20日の口蹄疫
発生の発表以前とほぼ同様のものであり、 1頭当たり4千〜4千5百元とされる
台湾の肉豚生産コストを若干上回る水準となっている。 

● 業界の一部は、 海外進出を模索


 一方、 当面は台湾内での肉豚産業の発展が困難となったことから、 一部の豚肉
関係者は、 海外での養豚の展開を模索する動きをみせている。 具体的な進出先と
して豪州、 ベトナム、 フィリピン、 カナダおよび中国が挙げられているが、 一部
では、 既に10億ドル規模の投資を行って養豚場建設の準備に入ったものもあると
報じられている。 

● 撲滅後の再建方策に温度差


 政府当局は、 養豚・豚肉産業の救済対策として、 と畜処分する際の金銭的保証
や生産者および食肉業者の双方に対する低利融資などを実施した。 しかしながら、 
口蹄疫撲滅後の豚肉産業の再建のあり方については、 必ずしも明確な方策を打ち
出せないでいる。 

 こうしたことから、 李登揮総統は 「台湾の養豚業は輸出を放棄すべきではない」 
と、 輸出額が15億5千ドルにのぼる、 輸出産業としての養豚・豚肉産業維持の見
解を明らかにした。 一方これに対して国会議員の一部からは、「輸出を前提とした
大規模養豚は環境汚染を引き起こし易いこともあり、 養豚政策を、 内需バランス
型に変更すべき」 との声も上がるなど、 国内でも 「温度差」 が見られ、 暫くは今
後の政策決定への模索が続くものとみられている。 


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