乳価プレミアムにより品質向上や差別化を図る動き (イギリス)



● 大手乳業会社が 「優秀酪農家制度」 の開始を決定


 イギリスの大手乳業会社の一つであるユニゲート社は、 同社と直接供給契約を 締結した酪農家が、 動物愛護や衛生面などについて一定の基準を達成した場合に は、 契約に基づく乳価にプレミアムを付加する 「優秀酪農家 (Superior Stockma nship)」 制度を今年の11月から開始することを決定した。 また、 その基準を達成 できなかった契約農家からは、 ペナルティを徴収することとなっている。

● 3種類の部門に基準を設定


 この制度によると、 酪農家が達成しなければならない基準は、 3種類に大別さ れている。 まず、 第1の 「6種類の重要項目」 と呼ばれる基準には、 生乳の栄養 成分、 牛群の健康状態、 酪農従事者の熟練度、 畜舎、 搾乳機器の保守状態および 酪農家の事業計画の6分野をカバーする41の質問項目が設けられている。 それら の質問のすべてに 「はい」 と答えた酪農家は、 今年11月から1リッター当たり0. 3ペンス (1ペンス:約2円) のボーナスが支給されるが、3種類の重要項目にし か 「はい」 と答えられなかった酪農家は同 0.2ペンスのペナルティを払わなけれ ばならない。  また、 第2の 「5つの解放」 と呼ばれる基準では、 動物愛護の観点から農場内 の乳牛の飼養管理に関して、 設定されたものであり、 乳牛の栄養状態や不快度、 けがまたは病気などに対する措置など、 66の質問項目について自己評価を行うも のとなっている。 質問の中には、 「生まれた子牛に初乳を与えているか?」 や「乳 頭は搾乳前にきれいになっているか?」 なども含まれており、「はい」 が60以上の 場合は、 1リッター当たり0.1ペンスのボーナスが支給され、 55 以下の場合は反 対に同額がペナルティとして徴収される。  第3の 「酪農家検査」 は、 酪農家の貯乳施設やパーラーなどの衛生状態や安全 性などに関連して133の質問項目が設けられている。 この検査の対象は、畜舎の構 造や農場入口のネームボードにまで及ぶほか、 薬品の保管状態、 電源設備、 排水 管理など幅広いものとなっている。 そして、 項目の115以上か 「はい」 の場合は、 1リッター当たり0.2ペンスがボーナスとして支給され、 105以下の場合は同額が ペナルティとして徴収される。

● 酪農家は年に2回報告書を提出


 この制度は、 同社と契約を締結した酪農家に対し、 年に2回 (3月末および10 月末までに) 上記の報告書の提出を義務付けるほか、 提出を怠ると1リッター当 たり0.5ペンスのペナルティを課し、さらに、 年1回の検査の際に、 虚偽の報告が みられた場合には、 過去12カ月間に遡ってそれまで適用されていた乳価の精算を 行うことを定めるなど、 やや厳しい内容のものとなっている。  しかしながら、 動物愛護などを含めた飼養管理面も乳価プレミアムの対象とす るユニゲート社のこうした制度の導入は、 酪農家の収入増加を可能にする一方で、 契約酪農家の拡大や他社との差別化を狙った新しい動きとして注目されよう。
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