と畜部門に占める海外資本の割合が増加 (豪州)



● 外資系と畜加工施設の生産シェアが過半を占める


 このほど公表された豪州食肉研究公社 (MRC) の調査報告によると、家きん肉を 除く食肉の総生産量に占める外国企業所有のと畜加工施設の生産シェアは、 96年 (推定) において、51%と過半を占めており、 と畜加工施設総数に占める同外資系 施設のシェアをはるかに上回っている。 なお、 同施設総数に占める外資系施設数 の割合は、 76年の12%から96年には37%と、 過去20年で約3倍にまで拡大してい る。  進出した海外資本を国別にみると、 日系企業の生産シェアが最も高く総生産量 の19%を占め、 次いで米国の16%、 中国の10%などと続いている。 さらに、 これ を牛肉生産に限定した場合は、 日系企業の生産シェアは大きく拡大し、 35%と豪 州企業のシェア45%に、 次第にせまりつつある。

● 資本参入国の多様化が進む


 豪州の食肉産業は、 歴史的に、 海外市場を重要なマーケットとしてきた。 この ことから、 と畜加工部門への海外資本の進出には、 その時々の輸出状況を強く反 映する傾向があり、 60年代までは、 当時の主要市場だったイギリスからの資本進 出が中心であった。 しかしながら、 その後は、 対米輸出が増加したことに伴って、 米国からの資本参入が増加してきた。  さらに、近年では、豪州資本企業の後退が続く中で、 海外からの資本参入は、 イ ギリス、 米国のみならず、 わが国や、 ドイツ、 ニュージーランド、 中国、 ロシア などと、 多様化する傾向にある。

● 生産者からは価格支配に対する懸念が高まる


 現地食肉業界には、 海外資本の進出が、 新たな輸出市場の開拓に大きな役割を 果たしているとの評価がある一方で、 昨年来、 肉牛生産者からは、 海外資本の進 出が進み、 かつ、 食肉産業の寡占化傾向が強まってきた (家きん肉を除く輸出認 定と畜加工施設総数は、 この20年間で108から62へと減少) ことから、国内の肉牛 価格が不当に引き下げられているのではとの懸念が高まった。  近年の肉牛価格低迷の長期化を背景に、 それと海外資本の進出拡大を関連付け る生産者サイドからの非難は、 今回の報告書を契機に、 さらに高まる可能性もあ る。  大手4社が総牛肉生産量の8割以上を占める米国の状況を比較すると、 豪州肉 牛市場のパッカーによる寡占化の度合いは依然として低レベルであり、 現在の価 格低迷との因果関係を究明することは、 困難であるとみられる。 しかしながら、 豪州牛肉産業は輸出依存度が高い故に、 買い手側の利害と結びつきやすい海外資 本の動向に、 生産者を中心として厳しい目が向けられていることも事実である。
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