中国のブロイラー対日輸出、 平成8年度も増加



●平成8年度、 前年比約13%の増加


 中国では、 92年からの改革・開放の急展開による食肉生産急増の波に乗って、 特に、 93年頃からブロイラー生産が急速に増加した。 その増産傾向に対応して、 中国は輸出にも力を入れてきたが、 その中心を占めるわが国への輸出は極めて順 調に増加し、 急速にシェアを伸ばしてきた。 その結果、 平成5年度 (4〜3月: 以下同じ) には、 わが国の輸入ブロイラー市場で第一位を占めるようになった。  対日輸出はその後も順調に推移しているが、 平成8年度においても好調な伸び を示し、 対前年度比12.9%増の217千トンで第一位と、 第二位の米国の123千トン (前年度比2.5%減) に圧倒的な差をつけた。 なお、 その結果、 我が国の総輸入量 に占めるシェアは39%に上昇し、 平成5年度のシェアからは8ポイント上昇して いる。

● 急増傾向が際立つ冷蔵品の対日輸出


 輸入ブロイラーの市場では、 冷蔵品 (チルド) のシェルフライフが短いブロイ ラーの特性から、 我が国への輸送距離の短い (最短のケースで2昼夜) 中国が、 ほぼ、 独占的な優位さを獲得している。 しかしながら、 輸送手段や衛生水準の維 持が困難なことから、 平成5年までは、 輸出実績はほとんどなかった。 しかしそ の後、 衛生上の品質が向上したことや輸送手段の改善により、 平成6年度からは 実質的なチルドの輸出が始まった。  その後、 中国産チルドに対する需要家の認識が高まったことなどから、 その対 日輸出量は、 毎年度、 前年比 130%前後の急増を記録している。 なお、 平成8年 度の中国産チルドの輸入量は14.6千トン (月平均 1,200トン強) で、 同国の対日 総輸出量の約7%を占めている (平成6年度は2%弱)。  中国側のブロイラー関係者は、 かつて、 冷蔵品取扱いのための追加投資と冷蔵 保管・輸送能力の制約から、 チルドの生産能力を2万トン程度としていた。 しか しながら、 チルドへの需要の高まりと冷蔵輸送能力増大の相乗効果に刺激されて、 現在では、 その基礎的生産能力が拡大傾向にあるといわれている。

● 平成9年度、 生産増を促す経済環境が続く


 中国の対日輸出は、 近年の、 1)賃金水準の急上昇や飼料価格の高騰、 2)国内需 要の急増、 また、 3)付加価値税 (増値税) 還付率の削減などによって、 次第に競 争力を失い、 今後は、 伸び悩み傾向が出るとの観測がなされていた。 しかしなが ら、 当面の対日輸出目標であった 200千トンを、 平成8年度にあっさりと超えた ことから、 その国際競争力の強さが、 改めて浮き彫りになっている。  平成9年度においては、 前年度が、 当初予想を上回る好調な輸出実績を記録し たことから、 過去にみられたような増加率は期待できないというのが、 一般的な 見方である。 しかしながら、 今のところ、 現地のブロイラー生産を取り巻く経済 環境は、 順調な増産を期待できるものとなっており、 それが、 輸出意欲の高まり や国際競争力の維持にも、 プラスの影響を与えることになろう。

● 飼料価格下落や外資参入などがプラス要素に


 なお、 それらの、 生産拡大や輸出意欲、 国際競争力に好影響を与える経済的な 要素を整理すると、 次のとおりである。 1 ブロイラーの生産コストの約7割を占める飼料穀物の価格が、 その大部分を  占めるトウモロコシの大豊作により、 前年比で約3割低下していること。 2 引き締め基調のマクロ政策が維持されることから、 経済成長率の低下により、  賃金や物価水準が安定化してきていること。 3 飼料効率がよいことや国内需要が依然として強いことから、 国家の政策とし  ても、 ブロイラー生産を拡大する傾向にあること。 4 付加価値税の還付基準が確定したことや、 その納税義務部分の納付方法が、  輸出業者側にとって有利な方向に改められたこと。 5 先ごろ資本進出を決めた、 全米第一位のブロイラー企業であるタイソン社に  みられるように、 資本・技術力と販売力の高い外国企業の進出が続いているこ  と。  なお、 そうした中でも、 競争力維持にとって唯一の 「死角」 とみられるものは、 通過レートの問題である。 自国通貨 「元」 のレートは、 輸出好調による外貨準備 高の急増や引き締め基調の経済政策による高金利などにより、 主要輸出相手国の 「円」 に対しては、 引き続き高い水準で推移している。
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