トウモロコシの輸入数量を拡大へ (フィリピン)



● 国産畜産物の輸出競争力獲得が目的


 96年には、 トウモロコシの国際需給がひっ迫して、 国際価格の高騰が問題とな ったが、 その原因の一つとされた東南アジア諸国の飼料穀物に対する需要の拡大 は、 今も確実かつ急速に進んでいる。  政府は、 養豚、 養鶏業界と協力して、 鶏肉や豚肉などの畜産物を新しい輸出品 目に育てる計画を進めているが、 生産コスト引き下げによって輸出競争力を獲得 するため、 主要な飼料原料となる安価なトウモロコシの確保が課題となっている。 そうした中、 トウモロコシの輸入にかかるミニマム・アクセス数量 (MAV)の拡大 について、 この程、 トウモロコシ生産農家の同意が得られたことから、 その実現 に向けて大きく前進することとなった。 今後は、 トウモロコシ生産農家への影響 を回避するための方策が、 検討されることとなる。

● 生産の減少と飼料用需要の急増で需給がひっ迫


 フィリピンは、 東南アジアの中で、 インドネシアに次ぐトウモロコシの生産国 である。 しかし、 政府の生産奨励にもかかわらず、 生産量は90年の 490万トンを ピークに減少傾向にあり、 96年は420万トン程度にとどまったと見られている。な お、 このうち約25%が食用で、 残りの75%は飼料向けとされている。  次に貿易面についてみると、 同国は、 トウモロコシの国内生産が潤沢であった ことから、 不作時以外には、 ほとんど輸入を行っていなかった。 しかし、 国内生 産が減少する一方で、 食肉生産のための飼料向け需要が急増しており、 現在では、 国内産だけでは賄い切れない状況となっている。  このため、 96年から本格的なトウモロコシの輸入が開始され、 同年には、 約40 万トンの輸入が行われた。 なお、 97年には、 5割増の約60万トンの輸入が必要で あると予想されている。

● 養鶏・養豚業界から輸入拡大の要望


 トウモロコシの輸入は、 ガット・ウルグアイ・ラウンドの合意に伴い、 畜産物 と同様に、 96年に関税化が実施され、 MAVが設定された。 97年のMAVは、 14万5千 トンで、 1次関税は35%、 MAVを超える数量に適用される2次関税率は、80%とさ れている。  このため、 安価な飼料原料を必要とする養鶏、 養豚業界は、 この間、 トウモロ コシのMAVの拡大を政府に対し強く要望してきた。

● MAVの拡大幅は40万トンか


 同国では、 大統領令で関税が規定されているのに対して、MAVは農業省令で定め られている。 このため、 MAVを拡大するに当たっては、大統領府から議会に対し提 案を行い、 議会の承認を得る必要がある。  しかし、 同国の養豚、 養鶏業においては、 サン・ミゲルなどの4大複合企業が 政府、 議会に対して強い影響力を持っていることから、 この承認手続きには特に 時間を要さないものとみられている。 新たに追加される MAVは約40万トンと見込 まれており、 この結果、 今年の必要輸入量 (60万トン) の大半が、MAVの枠内で賄 われることとなる。
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