伸び悩むブロイラー産業 (マレーシア)



● ブロイラーの需要に頭打ち傾向が


 マレーシア農業省獣医局 (DVS)は、 96年の鶏肉生産についての統計を公表した。 これによると、 毎年10%以上の高い伸び率で急速に拡大してきた同国のブロイラ ー出荷羽数は、 96年には、 対前年比4.9%増の3億2千万羽となり、 94年以降、3 年連続で5%前後の増加にとどまった。  マレーシアでは、 国民の多くが信仰するイスラム教が豚肉の摂食を禁じている ため、 鶏肉が畜産物消費の中心的品目となっているが、 一人当たりの消費量は、 94年で既に29.6kgと日本の約3倍に当たる高い水準に達しており、 かつてのよう な需要の急増は、 もはや見込めない状況となっている。

● 主要輸出先国においても需要は伸び悩み


 一方、 輸出についてみると、 毎年、 同国の鶏肉生産の約15%程度が、 シンガポ ールへ生体で輸出されているが、 96年の生体での輸出量は、 対前年比 8.0%増の 4千2百万羽であった。 しかしながら、 シンガポールにおいても、 マレーシアと 同様、 鶏肉の消費が既に高水準に達している。 また、 人口の少ないシンガポール では、 観光客が食料品の消費に大きなウェートを持つが、 現在ではその数が伸び 悩んでいる。 これらのことから、 シンガポールへのブロイラー輸出にも、 今後は 大きな伸びは望めない状況となっている。

● インテグレーターによるひな生産の寡占化が進行


 ちなみに、 マレーシアのブロイラー業界ではインテグレーション化が進行して いるが、 DVS が昨年6月に実施した養鶏産業の実態調査によると、 ひな生産のう ち、 大手7社のインテグレーターが全体の72%を占める寡占状態となっており、 かつ、 その生産量は、 前年との比較で21.3%増加している。 これに対して、 非イ ンテグレーターによる生産量は、 前年から12.1%と大幅に減少しており、 同国の ひな生産の寡占化が確実に進行していることを示している。

● 政府は、 支援策としてコスト低減を検討


 一方、 同国のブロイラー価格は、 政府、 生産者団体などの協議によって決めら れているが、 ブロイラーが主要な畜産物であることから、 インフレ抑制を狙う政 府はこれを価格管理品目の一つとして指定しているため、 業界は、 年々増加する 労賃などを、 販売価格に転嫁することができないでいる。  こうした厳しい状況の中で、 政府内部からも養鶏業界を支援する政策立案が必 要との意見が出てきている。 その一つとして、 飼料として利用されている、 キャ ッサバやフィッシュミールなどの関税、 輸入課徴金の削減による、 生産コストの 低減などが検討課題に挙げられている。
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