◇絵でみる需給動向◇
豪州食肉畜産公社 (AMLC) によると、 96年の豪州の生体牛輸出頭数は、 対前年 比42%増加して72万3千頭となった。 これを輸出先別にみると、 この急激な伸び に最も貢献したのはインドネシアで、 同国向けの輸出頭数は対前年比69%増の37 万7千頭となり、 全体の過半数を占めている。 第2位のフィリピン向けは20万3 千頭と、 対前年比でみると1%減少している。 次に、 中東向け等への輸出も着実 に伸びており、 7万3千頭と、 全体の10%を占めるまでになっている。 生体牛輸出の伸びが順調に推移している背景には、 牛肉輸出が、 全般的には、 引き続き低迷しているのに対して、 生体には輸入需要が拡大していること、 また、 過去3年間ほどの 「学習期間」 を過ぎて、 検疫、 輸送、 販売ルートなどの技術的 な面で、 効率的な体制が整ってきたことによるものと考えられる。
輸出先はアジア地域が圧倒的に多く、 96年は同地域が全体の87%を占めた。 国 別では、 インドネシアとフィリピンのみで全体の80%を占める構造となっている。 インドネシアへは牛肉の輸出も増加しているが、 これが主にホテル、 高級レス トラン等に供給されるのに対し、 輸入素牛から得られる牛肉は地元のウェットマ ーケット (非コールドチェーンの自然発生的小売市場) を中心に出回ることで大 まかな住み分けが行われている。 同地域で需要が高まったのは、 最近の好調な経済成長を背景に所得が増大して 牛肉消費に弾みがついたこと、 また、 最大シェアのインドネシアについては、 信 仰上の制約から、 アジアで一般的な豚肉の消費がそれほど伸びないという点も大 きい。 さらに、 これらの素牛輸入により比較的手軽に農村で新たな雇用機会を創 出できることも魅力とされている。 なお、 一部の国は、 生体牛の輸入関税率を引 き下げることにより、 同地域の輸入の増加を促進している。
生体牛輸出は、 豪州の肉牛業界関係者の大方の予想を大きく上回る形で成長し てきており、 今後も、 引き続き、 東南アジアを中心に需要の増大を反映して、 増 加基調で推移すると予測されている。 特に、 インドネシアは、 人口2億人という巨大なマーケットを背景に97年には 対前年比7万頭増の45万頭の生体牛を輸入すると予想されている。 これに対して、 フィリピンへの輸出は、 同国内の生産コストの上昇、 肥育牛価格の下落、 及びイ ンドからの水牛肉の輸入増加により、 前年並みの20〜21万頭にとどまるとされて いる。 なお、 豪州からの97年全体の輸出は89万頭に達すると予測されており、 東南ア ジア向けはそのうち71万頭 (80%) を占めるとされている。
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