EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○輸入増でイギリス牛肉業界に不満の声



● アイルランド、 ドイツからの輸入が増加



 最近、 アイルランドやドイツなどからイギリスへの牛肉輸入が急増しているこ
とから、 イギリス側からは、 不満の声が出ていると伝えられている。 イギリス食
肉家畜委員会 (MLC) では、 子牛と畜奨励制度の進展から、 今年秋口には食用に
向けられる国内生産 (同国では、 牛海綿状脳症 (BSE) 対策から食用にしないと
畜が行われる。 ) は、 例年の水準より低下する方向に向かい、 その結果、 牛肉輸
入が増加すると既に予想していたが、 輸入増は早くも現実のものとなった。 

● 英ポンド高が輸入増に拍車



 MLCによると、 アイルランドの牛肉輸出は、 これまで同国の域外輸出の2〜3
割を占めていたエジプトおよびロシア向けが大幅に停滞しており、 これを補うか
たちで、 イギリス向け輸出が増加していると分析している。 

 また、 ドイツでは、 今年1月に、 新たに、 国産牛 (母牛はイギリス産とみられ
る) からBSEが発生した問題の影響が広がったことから、 同国の牛肉消費は再び
減少傾向にある。 このため、 同国の牛肉市況は下落傾向となり、 一部では、 極め
て低価格でイギリスに輸入されているとみられる。 

 こうした輸出国側の事情に加えて、 最近の各国通貨に対するイギリスポンド高
が、 同国の牛肉輸入の拡大に一層の拍車をかけている。 

● 業界は競争条件が不利と不満



 このような、 輸入牛肉の拡大に対して、 価格低迷に苦しむイギリスの牛肉業界
からは、 不満の声が出ている。 同国の業界団体は、 輸入牛肉について、 「一部の
ものについては、 その衛生管理面が、 BSE対策との関係で極めて厳重となってい
るイギリス国内とは同等でない、 また、 イギリス産では食用に供しない30カ月齢
以上の牛肉も、 これらの国からは輸出できる」 として、 競争条件上、 不利になっ
ていると非難している。 

 なお、 イギリスの牛肉消費は、 昨年3月に発生した、 新たなBSE問題により、そ
の直後は大幅に減少したものの、 昨年末以来、 回復傾向にあった。 したがって、 
牛肉業界の期待がふくらんでいたが、 結果的に、 輸入の急増によって、 水を差さ
れたかたちとなっている。 

● 縮小する牛肉産業へ強い危機感



 このため、 イギリスからの輸出が未だ解禁されていない一方で、 牛肉の輸入が
拡大していることに対して、 同国の牛肉業界のジレンマが高まっているといえる。 

 これに対して、 イギリス政府は、 競争条件均一化の要求に迎合して、 輸入規制
の強化を行うことは、 イギリスのBSE対策への不満が少なくない現状では、 EU各
国の合意を得ることが不可能であり、 また禁輸解除を求めているイギリスの立場
からは、 むしろ誤った選択となるとして、 業界に自重を求めている。 

 なお、 BSE対策がらみの96年のイギリスの30カ月齢以上の牛と畜処分計画対象
頭数は1百万頭以上になっているが、 そのうち約3千トンに上る牛肉が既に廃棄
処分されたとされる。 今後、 さらに、 75万頭から80万頭のと畜処分が続くとされ
ており、 縮小傾向がみえる国内牛肉産業への、 業界関係者の危機感が高まってい
る。 

イギリスの成牛と畜頭数

資料:MLC「UK MEAT MARKET REVIEW」 
注:96年第3四半期以降はMLCの推定

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