米国の牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○牛の飼養農家戸数が減少



● 前年比で1.3%の減少を記録



 米農務省によると、 牛飼養農家戸数は過去一貫して減少傾向で推移しているが、 
96年の牛飼養農家戸数 (年間を通して1頭以上の牛または子牛を飼養または保有
したことがある戸数) は、 前年と比べ1.3%、 1万5,920戸減少し、 119万4,390戸
となった。 これは、 飼料価格の高騰や肥育素牛価格、 肥育牛価格の低迷による肉
牛経営の収益悪化から、 農家の生産意欲が減退したため、 多くの中小経営者が経
営から離脱したことによるものであると考えられる。 

◇図:牛の飼養戸数と1戸当たり飼養頭数◇

 

● 経産牛飼養戸数では肉用と乳用で減少率に差異



 肉用経産牛飼養農家戸数も、 一貫しておおむね減少傾向で推移してきたが、 96
年は全体の減少率を下回り、 前年比1%、 9,450戸減少し、 90万680戸となった。 
このカテゴリーでも飼料の高騰や生産物 (肥育素牛) 価格の低迷により経営が圧
迫されたことは同じであるが、 全体の減少率を下回ったのは、 肉用牛繁殖経営が
より専業的であり、 かつ、 他への転換がより困難な地域に多く立地することから、 
それらが農家の 「離脱」 には抑制的に作用しているものと考えられる。 

 また、 同様に、 減少傾向で推移してきた乳用経産牛飼養農家戸数は、 96年は全
体の減少率を大きく上回り、 前年比7.5%、 1万230戸減の12万6,800戸となった。 
これは、 飼料高騰や乳価下落による経営圧迫要素に加えて、 大規模な新興酪農地
域との競争激化や後継者不足により、 家族経営などの多くの零細な経営が脱落し
たことによるものと考えられる。 

● 州別飼養農家戸数では、 テキサス州が約15万戸で第1位



 牛飼養農家戸数と飼養頭数を州別にみると、 第1位はテキサス州で14万9千戸、 
1,410万頭、 以下、 ミズリー州7万4千戸、 445万頭、 オクラホマ州6万4千戸、 
540万頭、 テネシー州6万3千戸、 240万頭、 ケンタッキー州5万4千戸、 255万
頭の順になっており、 これら5州の牛飼養農家戸数は全米の33.4%、 飼養頭数は
全米の28.6%を占めている。 なお、 飼養頭数が655万頭とテキサス州についで多
い、 カンサス州とネブラスカ州では、 飼養農家戸数は比較的少なく、 それぞれ、 
3万9千戸、 2万8千戸となっている。 

● 一戸当たり牛飼養頭数は規模拡大へ



 全国平均の1経営体当たり牛飼養頭数は、 前年比0.9%減少し、 84.7頭となっ
た。 

 経営体を牛の飼養頭数 (階層) 別にみると、 最も戸数の多いのは、 50頭未満の
階層で前年比で0.3%減の74万5,100戸に、 次が100〜499頭の階層で前年比0.2%
減の21万4,690戸となっている。 ちなみに、 100頭未満の階層が経営への不安や後
継者不足で前年比1.7%減少している一方で、 100頭を超える階層は、 前年比0.1
%とわずかに増加している。 このことから、 牛の頭数規模は大規模化へと徐々に
ではあるが推移していることがうかがえる。 

 なお、 肉牛経産牛飼養農家は、 100頭未満の階層が全体の92%を占めるが、 こ
のクラスが全米の経産牛の5割を飼養しており、 飼養規模の小さい経営が多いこ
とが分かる。 

 また、 乳用経産牛飼養農家は、 100頭未満の階層が全体の83%を占めるが、 こ
のクラスが全米の乳用経産牛の43%を飼養している。 一方、 200頭を超える戸数
は全体の5.5%であるが、 酪農が急拡大しているカリフォルニア州、 アリゾナ州
やニューメキシコ州ではこのクラスが全体の9割以上を占めていることなどから、 
このクラスの全米の飼養頭数シェアは前年を2%上回り、 37%を占めている。 


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