◇絵でみる需給動向◇
米農務省 (USDA) によると、 96年の全米の生乳生産量は、 前年比0.7%、 52万 5千トン減少し、 6千997万トンとなった。 生乳生産量は、 90年以降、 おおむね 増加傾向で推移してきたが、 96年は、 飼料価格の高騰により乳牛の淘汰が進み、 飼養頭数の減少が加速されたため、 前年を下回ったものと思われる。
96年の乳牛の月平均飼養頭数は935万頭で、 前年と比べ1.1%減少した。 乳牛の 飼養頭数は、 後継者不足での酪農家の廃業などにより減少傾向で推移しており、 過去10年間で9.5%減少した。 97年1月時点では、 乳用経産牛や乳用更新用未経 産牛が、 前年同期比でそれぞれ1.4%、 1.6%と繁殖牛が減少していることから、 今後とも減少傾向で推移するものと関係者はみている。
一方、 96年の1頭当たりの平均乳量は、 過去最高を記録し、 前年比0.4%増の7, 483kgとなった。 1頭当たりの乳量の増加は、 改良育種による乳牛の能力向上や 酪農家らの飼養技術の向上によることはもちろんのことではあるが、 一方で、 US DAが利用率を10%程度と推計しているbST (泌乳量を10〜20%程度増加させる能 力があるとされる牛成長ホルモン) の使用も大きな要因であると考えられる。 乳 牛の頭数が減少しているにもかかわらず、 一昨年まで生乳生産量がおおむね増加 傾向で推移してきた理由としては、 1頭当たりの平均乳量が増加したことがあげ られる。
次に州別の生乳生産量をみると、 第1位はカリフォルニア州で前年比2%増の 1,173万トン、 以下、 ウィスコンシン州1,015万トン (前年比2.5%減)、 ニューヨ ーク州523万トン (同0.6%減)、 ペンシルバニア州483万トン (同0.4%増)、 ミネ ソタ州428万トン (同0.3%増) となり、 上位5州で全米の生産量の52%を占めて いる。 なお、 カリフォルニア州は、 単月の生産量で93年8月に初めてウィスコン シン州を抜き、 94年からは、 通年でも同州を抜いて第1位となっている。
全米の1経営体の乳牛平均飼養頭数は、 前年比6.8%増加し、 73.7頭となった。 地域別でみると、 新興の生産地帯で、 大規模な企業的経営が多いカリフォルニ ア、 アリゾナ、 ニューメキシコ州では、 乳牛の保有頭数が200頭を超える戸数が それぞれ62%、 33%、 19%となっており、 これらの戸数で各州の保有牛の95%以 上を保有しているなど、 経営が大規模化していることがうかがえる。 また、 伝統的な酪農州であるウィスコンシン州では、 乳牛の保有頭数が100頭 未満の経営体が89.3%で、 同州の72.1%の乳牛を保有しており、 家族的な中小経 営が主体となっていることがうかがえる。 しかし一方では、 乳牛の保有頭数が10 0頭を超える経営体が前年より7.4%増加して、 10.7%となり、 同州の27.9%の乳 牛を保有している。 これは、 経営をあきらめた農家を他の農家が受け継ぐことに より、 家族経営のスタイルを維持しつつ、 規模拡大を図ったものであると考えら れる。
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