EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○豚コレラの発生が域内豚肉市況に影響



● 域内豚肉価格が、 上昇に転じる



 今年に入ってから、 EU最大の豚肉生産国であるドイツ、 また有数の生体豚の輸
出国であるオランダで発生している豚コレラは、 既に域内の豚肉市況に影響を及
ぼし始めている。 

 域内の豚肉価格は、 牛肉消費が徐々に回復傾向にあることなどから、 昨年の秋
以降、 1月までは下落傾向を示していた。 しかしながら、 豚コレラの流行が深刻
化し始め、 EU委員会の決定に基づき、 コレラ発生国での防疫措置が本格化した2
月第2週以降は一転して、 上昇傾向を示している。 2月第4週のEU平均の豚枝肉
卸売価格は、 対前年同週比2.9%高の149.6ECU (約2万1,700円)/100kgとなった。 
なお、 ドイツ、 オランダの国内価格も2月第2週以降は、 上昇傾向を示している。 

● ドイツ、 オランダ、 防疫上の措置を実施



 現在、 ドイツでは、 (1)豚飼養頭数が最大であるニーダーザクセン州を含む5
州および2地域からの他のEU加盟国への生体豚の輸出を禁止する、 (2)ただし、30
日間の検疫期間を設けるなど、 特定に衛生条件下では輸出を可能とする、 (3)と
畜を行う食肉処理場を制限する、 (4)豚コレラ発生州・地域からドイツの他の州
へ生体豚を移動する場合、 特別な検査等を実施する、 (5)発生州から輸出の解禁
は、 豚コレラの最終発生日から60日以後とする、 などの防疫措置が取られている。 

 また、 オランダでは、 同国最大の豚飼養地域である北ブラバント州のブレダ地
区をはじめとする7地区からの生体豚の輸出禁止が決定された。 なお、 オランダ
政府は、 豚コレラの発生地域では完全な防疫措置を実施しており、 その地域以外
からの輸出については問題がないとの安全宣言を行っている。 

 さらに、 両国から100万頭以上の子豚を輸入するベルギーでは、 数年前に同国
でも豚コレラにより大きな被害を受けたことから、 これらの輸入を禁止するとと
もに、 国内での予防措置として、 1月15日以降オランダから輸入された子豚1万
2千頭をと畜処分することを決定した。 また、 スペインもオランダからの生体豚
の輸入を禁止した。 

EU主要国の生体(子)豚の輸出入頭数

 資料:欧州統計局

 

● 介入買い上げにより、 豚肉需給はひっ迫か



 このような状況下で、 EU委員会は、 ドイツ、 オランダの防疫規制対象地域の生
産者救済のため、 生体豚の介入買い上げを発表した。 買い上げは、 ドイツでは肥
育豚10万頭、 子豚4.5万頭、 またオランダでは肥育豚35万頭、 子豚45万頭の合計
約95万頭が対象となっている。 また、 買い上げ費用は、 ドイツでは肥育豚55ECU 
(約8,000円)/頭、 子豚47ECU (約6,800円)/頭、 またオランダでは肥育豚45ECU 
(約6,500円)/頭、 子豚38ECU (約5,500円)/頭となっており、 その買い上げに要
する費用はEU委員会が7割、 加盟国が3割を負担することとなっている。 なお、 
買い上げられた豚の肉は、 食用以外の用途に供される。 さらに、 オランダは、 こ
のほかに肥育豚80万頭の追加買い上げを行うことも発表した。 

 もしこのまま、 オランダの肥育豚115万頭すべてがと畜処分されると、 約10万
トンの豚肉が処分されることになり、 昨年秋以降軟化していたEU豚肉需給動向は、 
今後は一転してひっ迫傾向になる可能性がある。 これにより、 1月までの価格低
下を受け、 デンマークなどがEU委員会に対して要求している豚肉の民間在庫補助
制度の発動に関しても、 少なからぬ影響を与えることになろう。 

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