全人代、 農業活性化など5項目を強調 (中国)



● 改革・開放の堅持と5項目の重点事項


 3月1日から、 全国人民代表大会 (全人代:国会に相当) が開催され、 冒頭、 李鵬首相の政府報告が行われた。 李首相は、 直前に死去した■小平氏が推進した 改革・開放政策の堅持を強調するとともに、 96年の政治経済活動・実績を踏まえ て、 97年の経済政策方針として、 次の5項目を提起した。 (1) 農業における経済活性化を、 引き続き優先課題とする (2) 適正な投資規模を維持しながら、 経済の構造調整に務める (3) 適度な引き締め基調の金融・通貨対策を維持する (4) 対外開放に一層努力する (5) 都市、 農村の生活水準の向上努力を継続する  連続豊作や好調な消費財生産、 また引き締め基調の金融対策等により高率のイ ンフレが沈静化した中国では、 経済政策面では、 工業生産の3分の1強又産業資 産増額の過半を保有するが、 その約4割が経営不振といわれる、 国有企業の改革 問題が最優先課題となっている。 世界貿易機関 (WTO) への加盟を強力に推進す る中国は、 その基盤となる国内経済を軌道に乗せるうえでの最大の課題として、 今回の全人代の周辺では、 その改革・構造調整問題が最も関心を集めている。

● 農地確保、 流通の改善などを重視


 しかしながら、 5項目の最初 (必ずしも優先順位ではないが) に農業関連項目 があることは、 民生安定の要であり、 かつ、 人口の3分の2近くを占める農業・ 農村部住民への配慮と受け止めることも出来る。 演説の中で李首相は、 「農業強 化・農村経済活性化」 の具体的方策として、 次の点を強調している。 (1) 穀物、 綿花の作付け面積を安定化させる。 また、 全ての地方政府には、 基 本農地の保護措置を遂行し、 かつ、 農地の減少・転用を最小限にするよう最善 (2) 穀物の流通システムを改革するとともに、 価格面でも、 農民の生産意欲を 維持できるよう価格システムを改善する。 (3) 生産量に応じた所得を得る農業生産責任制や、 経営上の集団と個々の生産 者の取り組みを結び付ける双層経営制を、 維持し改善する。 (4) 農業資材等の生産と供給面での改善に力を入れ、 かつ、 その価格安定に務 める。 (5) 食糧供給において、 地方政府が事実上の責任を持つ、 「米袋制 (穀物の省 長請負制)」、 「野菜籠 (副食品の市長請負制)」 を堅持する。 (6) 貯水・治水施設の建設に力を入れて、 干ばつや水害による農業被害を軽減 し、 農業生産を堅実に増加させることによって、 農家所得を増加させる。

● 97年の主要マクロ経済目標値


 また、 全人代では、 97年の国家のマクロ経済の重要指標として、 次のとおりの 目標値が掲げられた。 (( ) 内は96年の実績値) (1) GDPの成長率を年率8%とする (9.7%) (2) 小売物価上昇率を年率6%に抑制する (6.1%) (3) 輸出入の総額は3,100億ドルとする (2,899億ドル) (4) 人口増加率を1.14%とする (1.11% (現在約12.2億人))  なお、 中国のインフレ状況は、 小売物価の上昇率で計測されることから、 農産 物・食品の比重が高い中国では、 好調な農業生産と健全な農村経済が、 インフレ 抑制の重要は鍵の一つとなっている。
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