豪州の牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○肉用牛のと畜および価格動向


● 雌牛のと畜頭数が急増

 今年に入ってから、 肉用牛のと畜が前年水準を上回って推移している。 中でも
未経産を含めた雌牛のと畜増加が目立っており、 全体のと畜頭数が対前年比と比
較して1割前後の増加で推移しているのに対して、 4月以降の雌牛のと畜は同3
〜5割増という大きな伸びを示している。 

 このようなと畜の増加には、 主に次の2つの要素が作用しているものと考えら
れる。 まず、 雌牛のと畜増加については、 長期にわたる価格低迷の中で、 ここ2
年ほどは干ばつの被害が少なかったことでようやく経営を維持してきた農家が、 
今年に入ってからの広い地域での干ばつの発生により、 牛群の整理に動いたこと
が挙げられる。 また、 肥育牛のと畜増については、 年初来、 2大市場である日本、 
米国向けの輸出が回復傾向を示し、 パッカーの操業率が向上したことより、 引き
合いが増加していることが考えられる。 

◇図:雌牛(未経産を含む)と畜頭数◇


● ビクトリア州の雌牛と畜増加が顕著に

 豪州の肉用牛のと畜はクインズランド (QLD)、 ニューサウスウェールズ (NSW) 
およびビクトリア(VIC) の3州で9割近くを占めており、 そのシェアはそれぞれ
4割、 3割および2割となっている。 と畜の伸び率を州別に見ると、 肉用牛飼養
が最も盛んなQLD州がVIC州を若干上回る形で推移しているが、 未経産を含む雌牛
については逆にVIC州の伸び率が顕著となっている。 これは、3州のうちでは、 通
常最も降雨が多いVIC州において、干ばつの被害が広がったことを示すものと考え
られる。 

 なお、 豪州北部を中心に、 肥育素牛の輸出が増加を続けていることから、 国内
向けの素牛の手当てが次第に困難になってきていると伝えられる。 素牛の輸出が
今後も拡大傾向で推移すれば、 他の多くの肉用牛生産地域にもそれが波及してい
くことが考えられる。 さらに、 と畜増加という要因も加わるため、 牛肉関係者の
間では、 今後、 中期的には、 肉用牛の供給不足が表面化してくるという懸念が高
まっている。 

◇図:州別の雌牛と畜頭数の対前年同月伸び率の推移◇


● と畜増加と並行して肉用牛価格が好転

 次に、 長く低迷が続いてきた肉用牛の価格についてみると、 と畜の増加と並行
するかたちで今年に入ってからは急速に好転した。 

 豪州の肉用牛価格は、 輸出依存度が高いため、 米国市場における増産傾向の継
続や、 日本市場における米国との競争激化と需要の低迷などの影響により、 94年
半ば以降、 ほぼ一貫して値下がり傾向で推移してきた。 しかしながら、 今年に入
ってからは、 米国が減産基調に転じ、 さらに、 日本では牛肉需給が昨年のO−157
問題による低迷から脱して回復傾向を示し始めたことなどから、 肉用牛価格は上
昇に転じた。 特に、 今年3月以降は、 国内向けの若齢牛を除いては、 前年を大幅
に上回って推移しており、 この価格上昇は、 農家の出荷意欲を刺激する要因にな
ったと思われる。 その後、 冬季に入って、 季節的な要因により出荷が減少したこ
とから、 肉用牛価格は最近まで堅調に維持している。 

 しかしながら、 これから春の放牧シーズンを迎える豪州では、 干ばつの被害の
今後の展開如何によってはと畜動向に影響を与える可能性が残されており、 肉用
牛生産地域の気象状況には、 今後も注目していく必要があろう。 

◇図:肉用牛価格の推移◇

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