EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○重くのしかかる牛肉介入在庫


● 介入在庫量は増加の一途

 イギリス食肉家畜委員会(MLC) によれば、 97年6月末のEUの牛肉介入在庫量は、 
48万1千トン(枝肉ベースでは56万3千トン) に達している (左図参照)。 介入買
入れは、 96年3月の牛海綿状脳症(BSE) 問題の発生によって生じた域内の牛肉需
給ギャップを埋め合せるために発動されたもので、 牛肉需要の深刻な低迷によっ
て、 在庫量はその後、 増加の一途をたどってきた。 

 また、 介入在庫量を国別にみると、 EUの二大牛肉生産国であるドイツが15万8
千トン、 フランスが10万トンで、BSE問題の発端となったイギリスを上回っており、 
両国で全体の半分以上のシェアを占めている。 これらに次いで、 イギリスが7万
9千トン、 アイルランドが5万8千トンと続いている。 

 なお、 ドイツ市場価格情報センター (ZMP) の速報値によれば、8月初旬の全体
の介入在庫量は、 さらに増加し、 枝肉ベースで約62万トンに達したとされており、 
これは、 EUの年間牛肉消費量の10%弱、 わが国の年間牛肉総輸入量に匹敵する数
量である。 

EUの国別介入在庫量(97年6月末現在)



● 価格は、 ほぼ問題発生前の水準に

 一方、牛肉価格は、 昨年、 BSE問題により消費者の牛肉に対する信頼が大きく損
なわれたことから、 大幅な低落を招いた。 市場価格の指標となる去勢牛枝肉価格 
(グレードR3とR4のEU加重平均) の動きをみると、 昨年9月には、前年同月を19.
5%下回る2.27ECU (294円)/kgにまで下落した。 しかしながら、 それ以降は上昇
に転じ、 イメージダウンにより減退した需要が一部回復したことや介入買入れ措
置などの効果もあって上昇を続け、 97年8月には、 2.66ECU (345円)/kgと、ほぼ
BSE問題発生前の価格水準に回復した。 

 また、 成牛価格をみても、 昨年8月には前年同月を14.6%も下回ったものの、 
それ以降は、 ほぼ牛肉価格の回復とともに上昇傾向で推移し、 97年8月には1.36
ECU (176円)/kgと、 こちらも、 ほぼBSE問題発生前の価格水準に回復した (左図
参照)。 


● 注目される介入在庫の放出

 このような状況から、 今後は、 これらの牛肉在庫が、 いつ、 どのような方法で
放出されるかに注目が集まっている。 域内の牛肉需給バランスをみると、 ほぼBS
E問題発生前の状態に回復してきたとはいえ、引き続き供給過剰に陥り易い状況に
ある。 したがって、 在庫放出は域内需給に悪影響を及ぼさないよう、 域外輸出が
中心になるものと予想されている。 この場合、 最近、 輸出が急増しているロシア
をはじめとする旧ソ連諸国が、 最も有望な市場として挙げられている。 

 いずれにしても、 60万トン以上に及ぶ牛肉在庫が、 仮に域外市場に向けられた
場合、 国際需給バランスやこれまでの貿易秩序に何らかの影響が及ぶことは必至
で、 豪州をはじめとする主要輸出国は、 その動向に注目している。 



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