米国の牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○パッカーのと畜処理能力、 と畜実績頭数の動向


 米国の食肉コンサルタントであるCBW社は、1日当たりのと畜処理能力に基づく
96年の米国の牛と畜処理会社 (パッカー) のランキングを行うとともに、 パッカ
ーの所有する工場数、 年間のと畜処理頭数等を発表した(一部CBW社の推計を含む)。 


● 上位10社のと畜処理能力は2.6%増加

 これによると、パッカー上位10社の1日当たりのと畜処理能力は、 前年を2.6%
上回り、 113,250頭となった (ちなみに、上位10社の1日当たりの合計と畜処理能
力は、 日本の1ヵ月分のと畜処理量にほぼ匹敵している)。 なお、上位10社のと畜
処理能力の上昇には、 前年6位であった中堅パッカーのパッカーランド社 (ウィ
スコンシン州) が、 他社を買収して規模を拡大したことが、 大きく反映している
と分析している。 

 また、 上位10社のうち、 IBP、 コナグラ (モンフォート)、 エクセルの米国の3
大パッカーの総工場数は28で、その合計と畜処理能力は前年より600頭増加して87,
650頭となり、 上位10社合計の77%を占めた。 


● 3大パッカーと畜実績頭数、 全体の伸び率を下回る

 一方、 年間と畜実績頭数について見ると、 3大パッカーの合計は、 前年と比べ
1.6%増加の2,293万頭となり、 年間の総商業と畜頭数(3,658万頭) に占める市場
占有率は62.5%となった。 商業と畜全体に占める3大パッカーの市場占有率は、 
中堅パッカーの処理能力の拡大により、 2年連続して低下しており、 ピークとな
った94年と比較すると1.3ポイントそのシェアを失ったことになる。 また、肥育牛 
(去勢牛および未経産牛) のと畜頭数に占める市場占有率についても、同様に93年
のピーク時の78.1%から3年連続して減少しており、5.3ポイント低下の72.8%と
なった。 

[1日当たりの処理能力上位10社のランキング]



● NCBAがパッカー業界との協力体制構築を提唱

 なお、 生産者がパッカーの寡占化の牛肉価格に及ぼす影響について不信感と不
満を高めている中、 全国肉牛・牛肉生産者協会 (NCBA) は、 業界全体の協力を前
提とした牛肉の消費拡大を図る体制作りを提唱している。 すなわち、 業界全体が
協力して、 消費者ニーズを生産段階にフィードバックすることを通じて、 よりニ
ーズに合った高品質で安全な牛肉を生産することが消費拡大上必要不可欠である
として、 その相互協力体制の確立を強調している。 

 この背景には、 従前、 子牛生産から肥育、 と畜処理、 加工、 外食・小売りの各
段階がそれぞれの利益追求に終始し、 消費者ニーズに応えてこなかったことが、 
牛肉消費の減少につながったとの反省がある。 これは、 食鳥業界が垂直統合 (イ
ンテグレーション) により、 消費者ニーズに速やかに対応し、 その消費量を急速
に伸ばしていることと対照的であるとの認識によるものである。 

 このような中、 牛肥育協同組合であるUSPBは、 と畜処理能力第4位のファーム
ランド・ナショナル社の株式の50%を取得し、 同社との業務提携を図ることに合
意したと発表した。 これにより、 ファームランドが指定する方法で牛の肥育が行
われることになり、 垂直統合と同じ効果を得ることが可能になるとみられている。 
牛肉業界の今後の行方を占う意味で、 その動向が注目されるところである。 



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