EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○脱脂粉乳の需給動向


● 97年1〜5月の生産量は前年同期比3.1%の減少

 ドイツ市場価格情報センター(ZMP) によれば、 97年1〜5月の脱脂粉乳の生産
量は、前年同期比3.1%減の52万1千トンにとどまった。 これは、 生乳生産がクォ
ータ制度の下、 ほぼ前年並みの水準で推移している中で、 輸出需要の好調な全粉
乳と安定的な需要増が続くチーズの生産が増加していることから、 バター、 脱脂
粉乳への原料乳仕向けが減少しているためとみられる。 

 また、 国別の生産量をみると、 全体の3分の2の生産を占めるフランス、 ドイ
ツで、 それぞれ3.5%、 8.5%下回ったことが全体の動向に大きく影響している。 

 なお、 6月の生産量は、 ドイツ、 オランダでの生産増が期待されることから、 
ほぼ前年並みに回復すると見込まれている。 

EUの主要国別脱脂粉乳生産量(97年1〜5月)

 資料:ZMP
 (注)1 数値は暫定値
    2 前年同期比は、閏年調整後の増減率


● 飼料向け需要の低迷で価格は弱含み

 一方、 EUにおける脱脂粉乳の指標価格の一つであるドイツの工場渡し価格をみ
ると、 8月は3.95マルク (257円)/kgと前年同月を9%上回っているものの、 本
年2月の4.18マルク (272円)/kgをピークに弱含みで推移している (左図参照)。 

 これは、 需要面では、 主要輸出先であるメキシコやアルジェリアなどへの輸出
が順調に増加しているものの、 伝統的に域内消費の6割を占めた飼料向けの需要
が低下したためとみられる。 飼料用の需要が低迷している理由としては、 酪農家
がクォータを超過した生乳を子牛に給与する傾向が強まったことに加え、 牛海綿
状脳症 (BSE) 問題に伴う牛肉生産の抑制策として、各加盟国が実施している子牛
のと畜奨励事業が進展していることも一因と考えられる。 

 このような需給事情により、 季節的に在庫がピークとなる8月末の介入在庫量
は、 前年同月比33%増の14万トンと高い水準になっている。 


● 97年後半の需給は緩和基調の見通し

 また、 ZMPによる97年通年の域内の脱脂粉乳需給見通しによれば、生産量は前年
比2.4%減の124万トン、 これに対して消費量は飼料向けが減少することもあって
4.3%減の95万トンとなっている。 また、 輸出量は41%増の32万トンと予想され、 
97年末の全在庫量は、 前年末の17万トンを17.6%上回る20万トン (うち介入在庫
量は13万トン) と見込まれている。 このため、 97年後半の脱脂粉乳の需給は、 
引き続き緩和基調で推移すると予想されている。 

 なお、 EU委員会は8月から輸出補助金の一律5%カットを決定し、 脱脂粉乳に
ついては、 63.00ECU (8,170円)/100kgから59.85ECU (7,760円)/100kgに引き下
げられた。 これにより、 脱脂粉乳を含むEU産乳製品は、 海外市場での価格競争力
が低下し、 域内需給に何らかの影響を及ぼすことも予想される。 

EUの脱脂粉乳需給見通し

 資料:ZMP
 (注)1 ( )内の数値は対前年比
    2 96年は暫定値、97年は見込値
    3 バターミルクパウダーおよび粉末飼料を含む

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