◇絵でみる需給動向◇
EU最大の生体豚輸出国であるオランダで、 豚コレラの影響が深刻化しており、 輸入国にも影響を及ぼしている。 最大の輸入国であるドイツの97年第1四半期の 生体豚の輸入頭数は、 対前年同期比27.2%減の約40万6千頭と大幅に減少した。 また、 ベルギーの4月期の豚飼養センサスによれば、 同国の飼養頭数は、 オラン ダからの輸入減の影響で、 肥育豚の頭数が減少したことから、対前年同期比2.6% 減の約691万6千頭となっている。 その結果、 オランダに次ぐ輸出国のデンマークには、 代替需要による引き合い が急増しており、 97年上半期の同国の生体豚の輸出頭数は、 主にドイツ向けを中 心に対前年同期比56.4%増の約51万5千頭となった。 なお、 オランダは、 96年に約584万8千頭の生体豚を主に域内向けに輸出した。 その内訳を見ると、と畜向け肥育豚はドイツやイタリア向けなどに約284万1千頭、 子豚はスペインやベルギー向けなどに約300万7千頭となっている。 オランダの生体豚の輸出頭数 表1 肥育豚 表2 子豚 資料:イギリス食肉家畜委員会 「European Market Survey」 出所:オランダ食肉家畜ボード 注:表2のベルギーには、ルクセンブルクを含む。
現在、 オランダでは、 依然として豚コレラが終息しておらず、 主要養豚地帯で ある南部を中心に発生が見られている。 その発生件数は、 今年2月の初発生以来、 8月末までの間に、 合計388件となった。 また、8月に入ってからは同国の北部で もその発生が確認されるなど、 地域的にはさらに拡大する兆候すら見せている。 オランダ以外の国における豚コレラの発生状況を見ると、 6月末に発生が確認 されたベルギーでは一部の地域で生体豚の移動禁止措置が解除されるなど沈静化 に向かっており、 EU最大の豚肉生産国であるドイツではほぼ終息した。 なお、 ス ペインでは、 フランス国境に近いカタロニア地方でまだ発生が見られている。 一方、 EU委員会がこれらの国の防疫対象地域で生産者救済などのために行って いる生体豚の介入買上げの上限頭数は、 オランダで当初の80万頭 (子豚を含む) から822万5千頭にまで引き上げられ (7月15日)、 8月10日までの買上げ実績は 590万頭以上となった (買上げられた豚は、 食用には供されない)。 また、 ベルギ ーの上限頭数は、 17万8千頭 (買上げ実績は約2万7千頭)、 スペインは、41万頭 (同約29万頭) となった。
こうした中で、 オランダ政府は、 これ以上の豚コレラの発生を防止し、 併せて 環境対策を強化するため、 飼養密度の高い南西部を中心に、 今後、 総飼養頭数を 豚コレラ発生以前の75% (約1千80万頭) にまで縮小する計画を発表した。 その 方法は、 と畜処分による性急な方法を取らず、 各地域に飼養頭数を割り振る割当 制が取られる予定である。 同政府は、 この計画が承認されれば、 98年の中旬から 着手する予定であるが、 これが実施に移された場合、 同国の養豚産業はさらに打 撃を受けるため、 養豚農家をはじめ、 業界団体は強く反対している。 また、 この 計画は、 域内の生体豚の輸出入にも一層の影響を及ぼすだけに、 今後、 その動向 が注目される。
元のページに戻る