飼料穀物の輸入条件を見直しへ (豪州)




● 政府が、 飼料穀物検疫条件の見直しを示す

 アンダーソン第一次産業大臣は、 8月13日、 現状の飼料穀物の供給不足を解消
するためには、 何らかの方策が必要であるとして、 暗に現在の飼料用の輸入穀物
についての検疫条件の見直しを示唆する発言を行った。 また、 大臣の発言に引き
続き、 連邦政府が18日に公表した包括レポートのなかには、 現在の検疫条件を見
直すための行政手続きが盛り込まれている。 このことにより、 飼料用の穀物輸入
に関しても条件さえ整えば、 未処理での国内流通が可能となる一連の道筋が示さ
れた。 

 豪州では現在、 飼料用輸入穀物について、 防疫上の観点から、 豪州到着後の加
熱処理が義務付けられており、 未処理での国内流通は認められていない。 このた
め、 熱処理に伴うコスト増や品質低下などの問題があり、 実質的に飼料穀物の輸
入はかなり制約されている。 なお、 現在、 病原菌汚染のリスクが低いとして輸入
実現が有力視されているのは、 米国産トウモロコシで、 現在、 科学的見地からの
検証が行われている。 


● フィードロット業界を中心に強い要望

 94年の干ばつによる飼料穀物の大減産・価格高騰を契機として、 フィードロッ
ト業界は、 干ばつなどによる著しい飼料穀物の国内供給の減少というような事態
に備え、 未処理の輸入穀物の国内流通が可能となるような検疫条件の設定を認め
るよう、 連邦政府に働きかけていた。 

 これに対し、 疾病・雑草等の侵入の危険性を理由に穀物業界が強硬に反発して
いることから、 96年に政府が計画した未処理穀物の輸送試験も、 その成果を得る
前に打ち切られるなど、 未処理輸入穀物の国内流通の道は閉ざされていた。 

 今回の検疫条件の見直しは、 クインズランド州やニューサウスウェールズ州な
ど豪州東部の一部地域で、 雨不足が深刻化していることが背景となっている。 

 フィードロット、 養豚、 養鶏など従来からの需要者に加え、 牧草生育の悪化に
伴い、 緊急非難的に放牧から購入飼料に切り替える肉牛生産者などもあり、 飼料
穀物の需要は増加傾向にあるとされる。 一方で、 冬作穀物の減収が予測されてい
ることなどから、 国内飼料価格はこの7月に入って上昇を続けている。 

 わが国の牛肉自由化を契機に、 近年、 急速に拡大したフィードロット部門は、 
今や、 豪州の飼料穀物需要の4分の1を占めるともいわれる大きな需要セクター
となっている。 このため、 今回の検疫条件の見直しを推進する上で、 多大の影響
を与えたとみられるが、 反面、 同部門の急速な需要拡大が、 国内飼料穀物供給の
減少局面においては、 より逼迫度を高める原因となっていることにも注目すべき
である。 今回の見直しが発表されたことは、 豪州国内の畜産業界にとって、 歓迎
すべきものとなるであろう。 



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