鶏卵の市況低迷が続く (中国)
● 昨年秋以降低落傾向に転じた市場価格
中国の食生活においては、 畜産物の中では豚肉 (食肉全体の7割弱を占める)
と並んで、 なくてはならぬ存在である鶏卵の市場価格が、 このところ低迷してい
る。 改革・開放による経済の急成長が続いていることから、 他の畜産物と同様、
鶏卵についても堅調な需要が持続しており、 近年では季節変動とはあまり関係な
く市場価格が上昇してきた。
そうした中、 昨年秋頃まで上昇基調が続いた鶏卵価格は、 インフレ抑制型の経
済運営が奏功して、 物価の安定傾向が定着化した11月以降は低落傾向が表れ始め
た。 鶏卵市況には、 その後の需要期である中国正月 (春節) 期においても反発が
みられず、 今年春以降は低迷傾向が続いている。
〈鶏卵の市場価格の推移〉
(注)1 国内貿易部調べ 2 国有商店と自由市場価格の単純平均
● 豚肉を上回る生産急増が低落の原因か
次に生産動向についてみると、 同様に消費成熟度が高い豚肉に比べても、 家き
ん卵 (鶏卵以外に水きん卵が多いことによる) はより大きな伸び率を示している。
これを改革・開放が本格化した91年から96年の5年間でみると、豚肉が約1.6倍と
なったのに対して家きん卵の方は約2倍と、 卵の方がより一層急増している。 こ
のため、 いずれ消費が息切れし、 市場価格が修正局面に入る要素が、 次第に増幅
していったものと考えられる。
なお、 豚肉については、 過剰傾向による価格下落が、 一足早く95年末には既に
始まっている (現在では以前の水準以上に回復) が、 鶏卵の場合はそれから約1
年後に下落傾向が顕在化し始めたことになる。 このことは、 双方とも欠くべから
ざる動物たんぱく源であるが、 鶏卵価格は一般に豚肉の半分以下であり、 供給増
大と需要の拡大のバランスが、 より長期にわたって維持されたことが原因と考え
られる。
〈家きん卵の生産動向〉
(注)資料:中国統計年鑑
● 飼料価格下落が市況低迷の影響を吸収
養鶏は、 畜産部門では、 比較的、 生産を市場環境に適合させやすい分野である
と考えられる。 したがって、 価格低迷が長期化すれば、 自律的に生産が減少し価
格が回復するという市場原則が作用すると考えられるが、 現実には、 6月現在そ
の兆候は現れていない。
その要因の一つは、 95、 96年と2年続きの豊作により、 飼料穀物の大半を占め
るトウモロコシ価格が以前に比べ大幅に低下し、 市況低迷による経営圧迫が、 あ
る程度回避されていることが挙げられる。 生産コストに占める購入飼料費の割合
が高い養鶏業は、 トウモロコシ価格低下の恩恵を最も受けている部門の一つとい
うことが出来よう。
なお、 今夏は猛暑の影響が少なかったこともあり、 生産は当面順調に推移する
とみられるので、 秋に入っての卵価反発といったシナリオは予期しにくい。 そう
した状況下でも、 同じ中国人型食生活圏で比較すると、 中国の鶏卵消費量にはま
だ若干伸びる余地があると考えられることから、 市況が今以上に悪化する懸念は、
あまりないと考えられる。
〈参考〉鶏卵の一人当たり消費量
(注)1 資料:米国農務省 2 単位 個/年
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