全国規模で学乳事業を開始 (フィリピン)




● 民間の慈善団体が中心となり実施

 フィリピンでは、 小学校の児童に対して、 無償で牛乳が提供されることとなっ
た。 この事業は、 民間の慈善団体が中心となり、 大手乳業会社、 紙パック製造業
者などの民間企業の協力を得て実施される。 また、 同国の教育・文化・スポーツ
省もこの計画を後援している。 

 同計画によると、 13の行政区域のうち8つの区域の12以上の主要都市において、 
義務教育となっている小学校のうち、 1年生の児童を対象に、 6ヶ月の間、 始業
時に各児童に対し1日1パックのLL牛乳が提供される。 


● 児童の健康状態の改善が目的

 フィリピンは、 経済は成長過程にあるものの、1人当たりのGDPが95年にようや
く1,000USドルを超えたばかりである。 畜産物の消費量はまだ低い水準にあり、1
人当たりの畜産物の消費量は、 品目によって差があるが、 日本の水準の2分の1
から5分の1程度である。 

 また、 貧富の差が大きく、 学校では朝食をとってこない生徒が多いため、 児童
の栄養状態の低下が懸念されていた。 

 このため、 同計画は、 ヒトの成長過程の中で重要な時期である、 小学校通学児
童の栄養状態の改善を目的として実施される。 

 なお同計画では、 事業の効果を明確にするため、 計画開始前と開始後に児童の
身体検査が実施されることとなっており、 確実に児童の栄養状態の改善が見られ
るものと期待されている。 


● 将来の消費拡大にも期待

 同国では、 かつて、 アキノ政権下でも、 同様の計画が首都圏を中心に実施され
ていたが、 政権交代を期に長く中断していた。 しかし、 昨年、 一部地域で児童へ
の牛乳供給が再開され、 その効果が明らかとなったことから、 今回、 全国規模に
拡大されることとなった。 

 今後、 フィリピンでは、 経済成長に伴い、 畜産物の需要が急速に拡大していく
ことは確実であるが、 同計画により牛乳に慣れ親しんだ児童の増加が、 将来の牛
乳の消費拡大に良い影響を及ぼすことが期待されている。


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