rBST使用表示をめぐる裁判が決着 (米国)




● 表示方法に関する司法決着を受け入れ

 イリノイ州は、 「rBST (合成牛成長ホルモン:生理的に分泌されるBSTと区別す
るために 「r」 をつける)等のホルモン剤を使用していない乳牛から生産された生
乳を原料とした乳製品に対して、 rBSTフリーという明確な表示を行うことは認め
ないが、 rBSTを使用していないことを婉曲的な表現でラベルに表示することは認
める」 という、 連邦地裁の司法決着に従うことを明らかにした。 


● 4乳業メーカーがイリノイ州を訴える

 これは、 イリノイ州においてrBSTを使用していない乳牛から生産された原料乳
でアイスクリームやヨーグルトを製造している乳業メーカー4社が、「自社製品に、 
rBSTを使用していない旨を表示できないのは、 消費者に対して商品に関する情報
を提供する権利を犯すものだ」 として、 連邦地裁に同州政府を訴えていたことに
対する司法決着を受けての決定である。 


● 搾乳牛の2割弱にBST投与

 rBSTは、 大手化学・製薬会社モンサント社が開発した合成牛成長ホルモンの一
種で、 投与し、 適正な管理をすることで、 乳牛の泌乳量を10〜15%程度高めるこ
とができると言われている。 このホルモン剤は、 93年11月に米食品医薬品局 (FD
A)が生乳生産における使用を許可し、 94年2月から販売が開始された。 認可を行
ったFDAでは、「BSTは、 通常の牛の生理過程においても生成されるものであり、 人
工的に製造されたrBSTも人体に悪影響はない」 との立場を取っている。 

 なお、 米農務省は、 rBSTが16%程度の搾乳牛に投与されているものと推計して
いるが、 当初の見込みより普及していないと分析している。 


● バーモント州では表示義務規則を廃止

 rBSTの使用に関する表示問題は、 当初から生産者や消費者の関心が高く、 論議
を呼んでいた。 こうした中、 牛乳・乳製品にrBST使用に関する表示を義務付けた
バーモント州の規則が、 連邦地方裁判所の裁定で違法とされ、 その表示規則は昨
年廃止されている。 


● 合成ホルモン不使用のアピールを工夫する動き

 今回のイリノイ州の乳業メーカーの訴えは、 バーモント州の場合とは異なり、 
乳業メーカーが自社で製造している乳製品の差別化を図るために、 原料となる生
乳が、 rBSTを使用していない乳牛から生産されたものであることを、 表示に盛り
込みたいと考えたことから行われた。 

 今般の司法決着を受けて、 乳業メーカーは、「私達は、 合成牛成長ホルモンに反
対します。 当製品の原料となる生乳を供給する酪農家は、 rBGH (=rBST) を乳牛
に投与しないことを誓います。 」 という内容の文面を製品のラベルに盛り込むこ
とを予定している。 

 また、 関係者は、 今回の決定が、 遺伝子組替え食品等の表示方法のあり方に関
する今後の論議にも影響を及ぼすものとみている。 



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