タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○タイの鶏肉需要動向


供給増により価格上昇基調に乗らず

 バンコク市場では、 ここ数年、 7月と8月に、 1年でもっとも鶏肉価格が上昇
する傾向が定着していたが、 今年の7月の鶏肉の卸売り価格に大きな変化は見ら
れず、 ここ4ヵ月ほど28バーツ前後での取引きが続いている。 これは、 前年比
約30%増という高い生産量水準が維持されている中で、 対日輸出が引き続き不
振であることから、 国内向けの供給が増加しているためとみられる。 従来、 輸出
の比重が大きいタイでは、 鶏肉価格は、 鶏肉輸出量の動向に大きく左右されてき
たが、 今回の価格変動の動きは、 輸出の停滞と、 国内市場の急速な拡大という市
場環境の変化の下で、 新たな価格変動パターンに移行する兆しであるのかも知れ
ない。 


日本向け冷凍鶏肉輸出の収益性悪化

 次に輸出動向についてみると、 冷凍鶏肉の対日輸出価格が大幅に低下している。 
対日輸出価格は、 昨年の7月をピークに10月から一気に下がり始め、 今年の2
月までの7ヶ月間に11.6%も低下した。 同時期、 円の対米ドル相場が下落し
ており、 輸出価格低下の動きは、 為替変動による輸入価格の実質的な値上げを嫌
う日本のユーザーの圧力がいかに強いかを示すものであり、 かつ、 競争が激しい
日本市場におけるタイ産鶏肉を取り巻く環境の厳しい現状を暗示するものであっ
た。 輸出価格の低下に伴って、 日本向け輸出の収益性は悪化しており、 タイの鶏
肉輸出企業は、 高い価格水準で取引数量の拡大が続くEU向け輸出と、 急速な需要
拡大に支えられた国内向けの生産で収益を維持していると見られる。 


タイバーツ安の影響

 その後、 タイバーツが変動相場制に移行され、 実質的に大幅な切り下げとなっ
たが、 一般的に自国の通貨が切り下げられた場合には、 輸出企業に有利になると
いわれている。 しかしながら、 タイの鶏肉輸出については、 一概にそうとは言い
きれない状況にある。 確かにUSドル立ての契約が多いタイ産鶏肉の輸出では、 バ
ーツ安の影響で一時的に輸出金額は増加する。 しかしながら、 特に日本向け輸出
については、 これを機に、 今後はドルベースでの輸出価格の引き下げをさらに迫
られると見られる。 また、 中長期的には、 多くを輸入に頼っている種鶏、 大豆ミ
ールなどの飼料の値上がりが予想され、 諸物価高騰による労賃の上昇などと併せ、 
今後、 生産コストが大幅に上昇することは間違いない。 さらに、IMFによる緊急融
資の条件とされた、 付加価値税の現行7%から10%への増税が控えている。 為
替制度の変更によりタイバーツ相場は大幅に下落したが、 このことはタイ産鶏肉
の国際競争力の回復に単純に繋がるものではないと言えよう。



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