◇絵でみる需給動向◇
EU最大の豚肉輸出国で、 養豚農家戸数が全農家戸数の約3割を占めるデンマー クでは、 効率の良い近代設備を備えた大規模農家が増加している。 飼養頭数が5 00頭以上の養豚農家が全養豚農家に占める割合は、 76年の1.8%から、 9 6年には32. 8% (対前年比では、 1. 2%増) へと大幅に増加した。 この ため、 これらの大規模農家が保有する豚は、 同国の豚総飼養頭数の約8割に達す るに至っている。 この原因としては、1) 豚のふん尿などに対する環境規則が徹底強化されている こと、 2) 近年の動物愛護運動の高まりにより、豚の飼養管理基準が厳しくなって きていること、 3) 90年代半ばにかけて、 豚肉の市場価格が全般的に低迷し、経 営不振が続いたことなどにより、 小規模を中心とする養豚農家が養豚経営から撤 退したことにある。 なお、 同国の養豚農家戸数は96年には、 約2万戸となって おり、 76年と比べると、 約4分の1 (対前年比では7%減) となっている。 また、 農家戸数を飼養形態別に見ると、 肥育専門農家の割合が、 76年の21 %から、 96年には33% (前年ではほぼ同じ) へと増加しており、 養豚の経営 分化が進展していることを示している。 ◇図:養豚農家の飼養規模別シェアの推移◇
こうした中で、 96年には、 肥育豚の平均生産者価格が前年を11.1%上回 る10.66クローネ (約189円) /kgとなったことから、 養豚農家の平均純 利益 (税引き前) も大幅に増加し、 前年を50%上回る52万5千クローネ (約 930万円) となった。 これは、 牛海綿状脳症(BSE) 問題の影響により、 牛肉から豚肉へと需要がシフ トしたことなどから、 肉豚価格が夏から秋にかけて、 近年にない高価格で推移し たことがその要因として挙げられる。 さらに、 97年に入ってからも、 オランダ などで豚コレラの発生が深刻化したことにより、 デンマーク産豚肉への引き合い が急増し、 肉豚価格が急上昇したことから、 同国の養豚経営は引き続き好調な収 益性を維持できると見込まれている。
次に、 と畜部門について見てみると、 同国では、 業界団体であるデンマーク豚 肉輸出機構連合 (DS) 傘下のと畜会社が、 国内の全と畜頭数の90%以上を占め る寡占状態となっている。 DS傘下のと畜会社は、 国際市場での競争力強化を図る ための統廃合や規模拡大を進めた結果、 76年の54社から、 94年には4社に まで減少した。 その4社は、 現在、 国内に22のと畜場 (繁殖用雌豚専用のと畜 場を含む) を有している (なお、 DS傘下外の民間のと畜場も9社あるが、 それら は零細規模である) 。 また、 国内最大のと畜会社はDS傘下のデーニッシュ・クラ ウン社で、 46%のシェアを押さえている。 そうした中で、 デンマークから隣国ドイツ向けへの生体豚の輸出が急増し、 9 6年には、 対前年比48.6%増の約69万5千頭となったことにより、 国内の と畜頭数が減少しているが、 このことは、 これらのと畜会社の経営に悪影響を及 ぼし始めている。 その対策として、 と畜会社による外国への進出の動きが現れて おり、 ベスチスク社 (DS傘下:と畜シェアは29%で第2位) は、 今年2月にド イツのと畜場を買収した。 ◇図:国内と畜シェア(96年)◇
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