◇絵でみる需給動向◇
台湾の肉豚卸売価格が再び下落傾向を強めている。 肉豚価格は、 口蹄疫による 大規模なと畜処分によって供給量が大幅に減少したことや、 口蹄疫発生当初は豚 肉消費を敬遠していた消費者が回帰し始めたこと等から、 6月上から中旬には口 蹄疫発生直前の水準 (4, 500〜5, 000元程度:生体100kg当たり) にまで回復した。 しかしながら、 次第に肉豚の供給量が増加してきたことや、 消 費が鈍る夏季を迎えたことから肉豚価格は徐々に加工傾向を強め、 8月上旬の段 階では3, 000元台で推移している。 政府系機関紙 「養猪報導」 によると、 農業委員会 (農業省に相当) は、 現在の 豚総飼養頭数は、 従来の国内需要を賄える規模となっており、 暫くの間は需給バ ランスを維持することができると考えられる、 としている。 また、 口蹄疫の発生 が沈静化してきたことから (7月16日以降の再発生は未確認:8月12日現在) 、 養豚再開や飼養頭数増加を求める農家が出始めたことに対しては、 現状を冷静に 受け止め、 今後の国内の需要動向を慎重に分析して、 安易に養豚再開等を行わな いよう注意を喚起している。 なお、 現地報道によると、 肉豚の育成期間が6ヶ月であることを考慮すれば、 3月末の口蹄疫発生以来の大規模なと畜処分の影響による豚肉供給の減少傾向が、 9月末頃からは継続的に現れてくるとしている。 こうしたことから、 季節的に豚 肉消費が回復し始める秋以降は、 肉豚価格が5, 000〜6, 000元に回復 することもありうるとの予測が、 一部の豚肉加工業者から出されている。 ◇図:肉豚卸売価格の推移◇
次に、 養豚農家以上に口蹄疫の被害が大きいとも言える輸出食肉パッカーの動 向についてみると、 国内での事業を当面中断又は縮小し、 海外へ進出する動きが 見られる。 輸出の9割を占めていた対日輸出は、 当分の間、 再開できないと考えられるこ とから、 大手パッカーの一部は、 事業の継続を図るため、 海外へ生産・調達拠点 を求める動きを強めており、 すでに米国等では、 米国産豚肉を買い付けて日本に 輸出していると伝えられている。 また、 これらのパッカーは、 米国、 カナダ、 豪 州等で現地パッカーを買収/資本参加したり、 大規模養豚場を建設する動きをみ せている。 これらの大手パッカーの戦略の一つは、 現地で調達又は生産した肉豚 をと畜・加工して、 今日まで培ってきた販路や技術的ノウハウを活かして、 対日 輸出に参入することである。 また、 中国の上海市への投資を計画しているパッカーもあるが、 これは同市が、 経済成長が著しい沿海地域の中でも、 最も発展しており、 かつ、 最も人口の多い 都市であることから、 多大な食肉需要が見込めることが理由とされている。
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