2000年以降の行動計画を提案 (EU)




今後のCAPや拡大EUの方向付けを提案

 EU委員会は、 7月16日のEU議会で、 今後の共通農業政策(CAP) や拡大EUの成
立に向けた中・東欧諸国の加盟問題などについて、その方向付けを提案した、 「2
000年以降の行動計画」  (アジェンダ2000) を提出した。 

 アジェンダ2000によれば、 CAPについては、 今後、全般的な農産物の支持価
格の引き下げ、 それに代わる直接所得補償制度の拡充、 農村開発の推進などとい
った改革が提案されている。 


牛肉の支持価格は2000年以降3年間で30%引き下げ

 そのうちの牛肉分野については、 輸出補助金を伴わない輸出市場の開拓、 域内
需要の回復および現行の輸出補助金の低減を目的として、 支持価格を2000年
から3年間で約30%引き下げ、 2, 780ECU (約35万6千円) /トンから
1, 950ECU (約25万円) /トンとすることが提案されている。 これは、 現
状の牛肉に対する市場政策を維持すると、 2005年には介入在庫が150万ト
ンまで積み上がるとの予測に基づく対応措置である。 さらに、 この措置によって
生ずる肉牛生産者の所得低下を補償するために、 現行の肉牛奨励金制度の単価を
徐々に増額する提案がなされている。 


現行の生乳生産クオータ制度を2006年まで延長

 また、 酪農分野については、 今後2005年まで、 在庫量はほぼ同じ水準 (生
乳換算で900万トン〜950万トン) で推移し、 市場に大きな変化はないと見
込まれることから、 支持価格の大幅な引き下げや生乳生産割当 (クオータ) 制度
の早期廃止などの抜本的な政策変更は提案しないとしている。 また、 これまで多
くの議論がなされてきた二重クオータ制度 (従来のクオータの他に、 輸出専用の
クオータを設置する案など) についても、 世界貿易機関(WTO) のルールに抵触す
る可能性があること、 制度の仕組みや適用いかんではわい曲化される可能性があ
ること、 さらに現行のクオータ制度の運用上の複雑さや管理上の問題を拡大する
可能性があることから、 提案しないとしている。 ただし、次期WTO交渉を念頭に置
いた次の提案を行うとしている (以下、 酪農分野改革案の骨子) 。 

1 現行のクオータ制度を2006年まで延長すること。 

2 介入買入れ制度、 輸出補助金制度などの市場制度を簡素化するとともに、 2
  006年までに乳製品の支持価格を平均10%漸減すること。 

3 支持価格の引き下げに対する措置として、 乳牛に対する奨励金制度を導入し、 
  酪農家に対する直接補償制度とすること。 なお、 乳牛に対する奨励金制度は、 
  牛肉分野においても、 導入される予定である (EUでは、 乳用種が肉用牛として
  飼養されていることが多いため) 。 


2000年の初頭の加盟に向け、 来年にも交渉を開始

 また、 EUの拡大に向けた中・東欧諸国の加盟問題については、 これら諸国の経
済状況などを審査した結果、 交渉を開始することが適当な国として、 ハンガリー、 
チェコ、 ポーランド、 エストニア、 スロベニアを提案している。 早ければ、 既に
交渉開始が決定しているキプロスと合わせて、 2000年初頭の加盟に向け、 6
カ国との加盟交渉が来年中にも始まる見込みである。 

 しかしながら、 これら諸国は経済水準が低く、 かつ、 経済全体に占める農業の
ウェイトが大きいことから、 CAP改革なしでの加盟を想定した場合には、農業予算
のさらなる膨脹が指摘されており、 その財政負担をめぐって加盟国間の意見の対
立が予想されている。 また、 同時に既存のEU加盟国にとっては、 それらの国々か
らの安価な農産物の流入に対する懸念がある。 

 今後、 農相理事会は、 12月の欧州サミットに向け、 この提案についての報告
をまとめる予定である。 一方、 EU委員会は、欧州サミット以降にCAP改革について
の正式な提案を行うものとみられる。 



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