夏収穫穀物は史上最高の豊作に(中国)




収穫量は前年比9. 5%増の1億2千4百万トン

 国家統計局は、 先頃、 夏収穫穀物 (6月末までに収穫されるもの) の収穫量を、 
前年を9.5%上回る約1億2千4百万トンと発表した。 夏穀は全体の約4分の
1を占めるに過ぎないが、 夏穀の生育・収穫期が秋穀の播種・生育期と重なって
いることから、 天候状態に左右されやすい穀物生産においては、 夏穀の豊凶は、 
秋穀の収穫高を予測する上での重要な指標の一つとなっている。 

 今夏の収穫については、 昨秋の播種前の作付け面積意向調査では、 前年比2%
強の増加が示されたことから、 収穫増がある程度は予測された。 しかしながら、 
その後、 全国の広い地域で、 天候不順や一部では被害が発生したことから収穫へ
の懸念が広がったが、 結果的には予想を大きく上回る増産が達成されたことは、 
注目に値する。 


南部の水害、 北部の降雨不足を克服しての豊作

 全般的には、 天候被害が大きくはなかったが、 揚子江流域及び同江以南の地域
で、 洪水被害が出たのに対して、 東北や華北地方また西北地域では逆に降雨不足
で、 一部では干ばつの発生が報じられた。 そうした状況下で、 結果的には豊作と
なった要因として、 政府関係者は、 1) (早い時期には) 天候に恵まれたことや、 
2) 行政当局が増産対策に積極的に取り組んだことを挙げている。それに加えて農
業関係者の間からは、 1) コメ主体の南部では早稲種作付け拡大による、 また、2) 
小麦主体の北部では農用水の調達努力などが奏効した結果である、 との声が出て
いる。 

 なお、 夏穀は、 大部分がコメや小麦などの食用穀物であることから、 飼料穀物
の需給に関しては、 直接的に大きな影響はない。 しかしながら、 穀物の仕向け先
が弾力的である中国では、 夏穀が不作となった場合、 その後には、 飼料穀物への
しわ寄せが起こることから、 現実には、 大きな影響力を宿しているといえる。 


トウモロコシについては降雨不足の克服がカギ

 今後の注目点として、 全体の約4分の3を占める秋収穫穀物で注視すべきこと
は、 飼料穀物の大部分を占めるトウモロコシの作柄である。 今年のトウモロコシ
の生育状態は、 8月初旬までの傾向をみると好収穫を期待できる状況にある。 し
かし、 主産地の東北、 華北地方では、 その結実期に於いても降雨不足が続いてお
り、 一部では既に、 減収になるのではとの悲観的な観測も流れ始めた。 

 今秋のトウモロコシの収穫高を現時点で正確に予想することは困難であるが、 
その後、 東北、 華北地方では降雨があり、 今のところ悲観的な観測は後退しつつ
ある。 いずれにせよ、 昨年の収穫量が前年比5%増しの1億1千7百万トンと大
豊作であったことから、 端境期に入った6月には供給量は潤沢であり、 その市場
価格は低水準で推移している。 

 こうした需給状況を反映して、 今年1月以降、 トウモロコシの輸入が停止状態
にあるのに対して、 逆に輸出の方は、 上半期 (1〜6月) で既に201万トンに
達している。 


総収穫高予測の上でも無視できない悪天候の影響

 トウモロコシ以外の秋収穫穀物についても、 降雨不足や洪水といった悪天候の
影響は同じように及ぶので、 年間の総糧食収穫高を現時点で正確に予測すること
もまた極めて困難である。 今のところ、 政府当局からも、 また農業関係者からも、 
昨年実績の4億9千万トンを下回るのでは、 といった悲観的な観測は出ていない。 
しかしながら、 北部では依然として水不足が続いており、 一方南部では、 8月に
入ってからも一部地域で引き続き洪水被害が発生していることから、 年間総収穫
高への悪天候の影響については、 予断を許さない情勢が依然として続いていると
いえよう (8月初旬現在) 。 



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