輸入牛肉の小売価格が高騰 (マレーシア)




インド産牛肉の価格が急上昇

 マレーシアでは、 インド産輸入牛肉の小売価格が6月までの2ヶ月間に20%
も上昇し、 各方面に波紋を広げている。 

 現地報道によると、 今回の輸入牛肉価格上昇の要因は、 1)マレーシア政府当局
が、 今年4月、 同国への牛肉の輸出許可を与えていたインドの4食肉処理業者の
うち2業者について、 食肉処理場の衛生管理の不備を理由にその許可を取り消し
たため、 インドからの牛肉輸入量が減少したこと、 2)輸出許可を取り消されなか
ったインドの2業者が、 独占的な立場を利用して輸出量を操作し、 価格を不当に
吊上げていることであるとされている。 


多くの消費者に打撃

 マレーシアでは、 国民の多くがイスラム教を信仰していることから、 食肉の消
費は鶏肉と牛肉が中心となっている。 このうち、 鶏肉は、 国内で完全に自給され
ているが、 牛肉は、 国内消費量のおよそ80%が輸入で賄われている状況である。 
ちなみに、 96年には、 7万1千トンの牛肉が輸入されたが、 このうち、 74%
に相当する5万3千トンがインドから輸入された。 また、 インド産輸入牛肉は、 
国産牛肉と比較して価格が2分の1程度と安いため、 低所得者層を含めた幅広い
所得階層で消費されている。 このため、 今回の価格上昇は、 特に低所得者層を中
心とした同国の消費者にとって、 非常に大きな問題となっている。 


政府は対応に苦慮

 一方、 輸出許可を取り消されたインドの輸出業者の食肉処理場の改修は目途が
立っておらず、 同国内で代替となり得る食肉処理業者も見つかっていない。 こう
した中で、 マレーシア政府は、 輸入牛肉価格上昇の報道には事実の誤認があり、 
実際には、 そのような急激な値上がりは発生していないというコメントを発表す
るなどして、 事態の沈静化に努めている。 

 しかし、 現実的には、 インド以外には牛肉をそれほど安く輸出できる国はない
ため、 マレーシア政府はその対応に頭を痛めている。 



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