◇絵でみる需給動向◇
米農務省(USDA)が2月19日に公表した97年の牛肉輸出量(枝肉換算)は、 前年比13.7%増の96万9千トンとかなり大きく増加した。国別にみると、 最大の輸出市場である日本向けは、前年比3.7%増の47万8千トンとなった。 日本向け輸出は、92年以降、前年比10%以上の高い水準で増加していたが、 日本での牛肉消費の伸び悩みなどにより96年からは2年連続で低い伸びにとど まっている。また、輸出量全体に占める日本向けの割合も5年ぶりに50%を割 り込み49.3%となった。 カナダ向けは、1)カナダドルの対米ドル相場が下落していること、2)カナ ダ国内で牛肉生産が拡大していることを受けて、前年比4.3%減の12万8千 トンと95年をピークに2年連続の減少となった。 一方、メキシコ向けは、前年比81.5%増の14万2千トンと大幅に増加し た。95年に見舞われた干ばつの影響で同国の牛肉生産が回復していないと見ら れている中で、経済の急速な回復を背景とした牛肉需給の増大がその要因と見ら れている。この結果、96年には第4位の輸出市場であったメキシコは、カナダ および韓国を抜き、97年では米国産牛肉の第2位の市場へと躍進し、北米自由 貿易協定(NAFTA)加盟国間で大きく明暗が分かれることとなった。 また、韓国向けは、前年比28.4%増の11万9千トンとなり、輸出量全体 の増加に大きく貢献している。 ◇図:牛肉輸出シェアの推移◇
97年の輸出は好調であったが、98年については減少するものと見込まれて いる。2月時点のUSDAの需給予測によると、98年の牛肉輸出量は、メキシコ向 けは引き続き増加するものの、アジア向けなどは大きく減少すると見られること から、前年比7.1%減の90万トンに落ち込むと予測されている。アジア向け 輸出の減少の要因としては、アジア各国通貨の対米ドル相場の大幅な下落から、 米国産牛肉の輸入価格が実質的にかなり上昇すると見られることが挙げられる。 また、主要市場の一つである韓国では、米国などとの合意により、98年にお いては、少なくとも18万7千トン(部分肉(骨なし)ベース)の牛肉を輸入す ることとされている。しかし、通貨危機に端を発した経済の低迷により、実質的 な家計収入が低下しているため、牛肉からより安価な食肉へ、また、牛肉の中で もより安価な部位へと消費の中心がシフトするものと見られている。結果として、 韓国では、米国産牛肉と比較して安価な豪州、ニュージーランド産の牛肉のシェ アが上昇し、米国産牛肉の韓国向け輸出は、大幅な減少が避けられないものと、 USDAは予測している。 ◇図:牛肉輸出量の推移◇
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