◇絵でみる需給動向◇
米農務省は、2月、月例の穀物需給予測を公表した。これによると、米国の9 7/98年度(10〜9月)の飼料穀物の輸出量(見込み)は、前月予測値より かなり下方修正され、前年度比9.7%(5.2百万トン)減の47.9百万ト ンになるとされた。この下方修正の理由としては、米ドル高で輸出条件が良くな いことに加え、東南/東アジア諸国の経済混乱で需要が鈍化していること、さら にはアルゼンチンなどの生産が前月までの見込みを大幅に上回り、国際市場をめ ぐる競争の激化が見込まれることが挙げられている。また、輸出見込みの下方修 正に伴い、米国の97/98年度末の推定期末在庫量は28.6百万トン(前年 度比5.8%増)に上方修正され、トウモロコシの取引予想価格も2.45〜2. 65セント/ポンドに引き下げられた。
今回、米国の輸出見込みが下方修正された要因の一つに、アルゼンチンの生産 および輸出の拡大が挙げられている。同国では、心配されたエルニーニョの影響 もなく、良好な気象条件となっていることから、97/98年度の飼料穀物生産 見込みが前月より2.5百万トンも上方修正され、21.3百万トンに達すると されている。また、これに伴い、同年度の輸出数量も1.8百万トン上方修正さ れ、13.3百万トンに達するとされた。このため、飼料穀物取引関係者の間で は、アルゼンチン産の飼料穀物が出回る本年第2四半期以降、国際市場をめぐる 競争が一段と激化するとの見方が一般的となっている。ちなみに、ここ数年、同 国の飼料穀物の生産および輸出量は順調に増加しており、本年度も、エルニーニ ョへの懸念をよそに、この拡大基調を継続することが確実となった。 ◇図:アルゼンチンの飼料穀物生産量および輸出量◇
アルゼンチンの穀物生産が拡大した最大の要因としては、同国の経済が安定し たことが挙げられる。80年代には、同国は多額の対外債務を抱え、極度のイン フレとなって経済が混乱した。しかし、90年代に入ると、政策の見直しが奏効 して経済が安定し、農業生産への投資も増加に向かった。また、最近では、外国 企業が同国内の先物取引で得た利益を非課税扱いとする(従前は27%課税)一 方で、商品流通における取引価格固定制度(“to be fixed":超インフレ時代の 名残の政策)を緩和するなど、経済のグローバル化への条件を整えつつある。同 国では、経済混乱期に導入された統制措置が多く残されており、また、先物取引 などのリスクヘッジ手段が発達していないなど、解決する課題が多いものの、今 後は、外国資本の導入と経済の活性化が進むと見込まれている。さらに、これま では国内で比較的閉鎖的な現物取引に甘んじていた穀物生産者が、国際市場の情 報により多く接する一方で、リスクヘッジ手段を有効に活用し、経営を安定させ、 これまで以上に生産を拡大する方向に向かうと思われる。今後は、アルゼンチン の生産・輸出動向が、国際需給のかぎのひとつとなりそうだ。
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