EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○脱脂粉乳の需給動向


97年の生産量は前年比5.7%減

 ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、97年のEU15カ国の脱脂粉乳
生産量は、前年比5.7%減の120万トン(暫定値)となった。これは、97
年の生乳生産量が若干減少した中(前年比0.2%減の1億1千3百万トン)で、
輸出需要が好調の全粉乳や域内需要が安定しているチーズ生産が増加したことな
どから、脱脂粉乳への原料乳仕向けが減少したことにある。

 また、各国別の生産量を見ると、全体の3分の2を占めるドイツおよびフラン
スが1月から11月まででそれぞれ前年同期比15.5%減の30万5千トン、
2.5%減の33万3千トンとなったことが全体の減少に大きく影響している。
特に、EU最大の生産国であるドイツで脱脂粉乳の生産量が大きく減少した理由に
は、同国のチーズの輸出需要が好調であること(97年1月から7月までで前年
同期比17.8%増の8万1千トン)に加え、国内需要も順調であることから、
チーズ生産が増加している(97年1月から11月までで前年同期比3.2%増
の146万3千トン)ことなどが挙げられる。


価格は98年に入り下落に転じる

 一方、EUにおける脱脂粉乳の指標価格の一つであるドイツの工場渡し価格は、
97年10月のEU委員会の輸出補助金引き上げにより、主要輸出相手国であるメ
キシコやアルジェリア向けなどが増加したこともあって、97年下半期以降上昇
したものの、98年に入ってからは下落に転じている。98年2月は、前年同月
を4.8%下回る398マルク(約2万9千円)/100kgとなった(左図参照)。

 これは、かつて域内消費量の6割を占めた飼料向けの需要が依然として低迷し
ていることが主因である。その背景には、96年3月の牛海綿状脳症(BSE)問題
の発生以降、域内牛肉生産の抑制対策として、各加盟国が実施している子牛のと
畜奨励事業などが進展していることに加え、酪農家がクオータを超過した生乳を
子牛に給与する傾向が強まっていることなどが挙げられる。


98年の域内需給は前年より緩和の見込み

 こうした中で、ZMPによる98年通年の域内脱脂粉乳の需給見通しによれば、生
産量は引続き全粉乳などの生産が増加することから前年比4.2%減の115万
トン、これに対して消費量は飼料向けがさらに減少することもあって、1.0%
減の95万トンになることが見込まれている。また、輸出量はメキシコ向けのわ
ずかな増加が見込まれるものの、全体では14.3%減の24万トンになると予
測されている。その結果、域内の需給はさらに緩和傾向となり、98年末の在庫
量(介入在庫量を含む)は、10%増の22万トンになるとみられている。

 なお、EUの脱脂粉乳の介入買上げは、3月から8月まで行われることになって
いるが、現在のところ、イギリスやアイルランドで買上げが行われている。

EU15カ国の脱脂粉乳需給

 資料:ZMP
 注1:( )の数値は、対前年比。
  2:97年は暫定値、98年は見込み値。
  3:バターミルクパウダーおよび粉末飼料を含む。



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