◇絵でみる需給動向◇
EU最大の生体豚輸出国であるオランダで97年2月から発生した豚コレラは、 同国の生体豚輸出に重大な影響を及ぼすものとなった。イギリス食肉家畜委員会 (MLC)によると、97年上半期の生体豚(子豚を含む)の輸出頭数は、前年同期 比66.7%減の146万6千頭と大幅に減少した。国別では、最大の輸出相手 国であるドイツ向けが前年同期比62.7%減の51万7千頭、イタリア向けが 66.2%減の25万4千頭など軒並み前年の3〜4割の水準に落ち込んだ。ま た、同国の豚肉輸出もこの影響を受け、ドイツ、イタリア向けなどが減少したこ とから、前年同期比11.3%減の30万8千トン(枝肉ベース、域外向け輸出 を含む)となった。 なお、オランダの96年の生体豚輸出頭数は、584万7千頭であり、ドイツ、 イタリア向けを中心に284万1千頭のと畜向け肥育豚が、スペインやベルギー 向けを中心に300万6千頭の子豚が輸出されていた。 表1 上半期のオランダの生体豚輸出頭数 資料:MLC「European Market Survey」 注1:ベルギーにはルクセンブルクを含む。 2:スペインは子豚の頭数。 表2 EU主要国の生体豚貿易(96年) 資料:MLC「European Handbook」 「European Market Survey」 注:子豚を含む域内の頭数である。
オランダの状況は、域内の生体豚の流れにも大きな影響を及ぼすこととなった。 97年第3四半期までのドイツのと畜向け生体豚の輸入頭数は、前年同期比58. 3%減の80万6千頭と大幅に減少した。その結果、オランダに次ぐ輸出国であ るデンマークに代替の引き合いが急増し、97年の同国の輸出頭数は、ほぼドイ ツ向けに前年比69.1%増の117万5千頭と大幅に増加した。 なお、97年第3四半期までのベルギーの輸入頭数(子豚を含む)も、40.3 %減の50万4千頭となった。
現在、オランダの豚コレラの発生状況は、今年1月に東ブラバント州で新たな 発生が確認されたものの(昨年2月の発生以降425件目)、ほぼ沈静化してお り、生体豚の移動制限区域も1区域のみとなっている。また、同国の生体豚の介 入買上げ措置による買上げ実績は、2月8日現在で、799万9千頭(子豚を含 む)となった。なお、その上限頭数は、2月第3週のEU豚肉管理委員会で882 万5千頭から1千24万頭に引き上げられた。 こうした中で、オランダ政府が発表した同国の豚の飼養頭数の削減法案は、生 産者団体などの強い反対により、当初の25%削減から20%に引き下げられた。 しかしながら、同国政府は、環境対策も兼ねた一部代替案として、政府が廃業す る豚生産者のふん尿(リン酸)生産規制枠(マニュアクオータ)を買上げ、その 枠の購入を希望する生産者には、売買の際に枠の縮小を行うことで、徐々に豚の 飼養頭数を削減していくことを検討している。その一方で、同国の一部の豚生産 者は、豚の飼養頭数が増加している旧東ドイツ地域に大規模な生産施設を建設し ていると伝えられている。
元のページに戻る