米国の豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○価格急落をめぐる業界の動き


98年2月は前年同月比31.5%安

 米農務省(USDA)によると、98年2月の肥育豚価格は、35.3ドル/10
0ポンド(約99円/kg)で前年同月の価格を31.5%下回った。

 肥育豚価格は、97年後半からの出荷頭数の増加や日本を中心とした東アジア
への豚肉輸出量の伸び悩みなどを背景に、97年7月以降一貫して前年水準を下
回って推移しており、97年の平均価格は前年を4%下回った。98年に入って
からも下落傾向が続いており、2カ月連続で30ドル台の安値となっている。

◇図:肥育豚価格(前年比)の推移◇


飼養頭数は増頭傾向

 豚の飼養動向を見ると、97年12月1日現在の総飼養頭数は前年同期比6.7
%増となり、3年ぶりに前年水準を上回っている。また、今後の飼養動向の指標
となる分娩予定頭数についても、97年12月〜98年2月期は前年同期比9.2
%増、98年3〜5月期では3.5%の増加が見込まれており、依然として増頭
傾向が続くものと予想される。


農務長官へ支援策を要求

 全国豚肉生産者協議会(NPPC)は、今年1月下旬、肥育豚価格の急落による豚
肉生産者の経営状態の悪化を懸念し、グリックマン農務長官あてに肥育豚価格安
定のための支援策を講じるよう要望書を提出した。その要望書では、最近の肥育
豚経営が前年水準に比べて1頭当たり42.5ドルの減収となっており、非常に
厳しい状態となっていることを強く訴えている。さらにNPPCは、価格安定のため
の方策として1)学校給食プログラムやPL408号(平和のための食料援助措置)
などの国内外向けの食料援助計画における豚肉の買上げ2)輸出信用保証計画の
活用による豚肉輸出の促進3)海外市場における非関税障壁の撤廃などを支援策
として提案した。

 また、豚肉の主要生産州であるイリノイ州やミネソタ州選出の下院議員2人は、
他の下院議員らに対し、USDAが肥育豚価格の下落防止策を採用することについて、
書簡でその理解と協力を求めていた。


USDA、3千万ドル分の豚肉買上げを発表

 こうした要請に応える形で、USDAは、2月下旬、学校給食プログラム向けなど
として3千万ドル(約37億5千万円)相当の豚肉の緊急買上げを発表した。ま
た併せて、今後とも海外市場の開拓などによる食肉輸出の拡大を図り、肥育豚価
格の安定に貢献していくことについても明らかにした。ちなみに、買上げされる
豚肉には、ひき肉、ハムなどの製品が含まれている。

 業界関係者は、今回の発表を受けて、USDAの迅速な対応に対し歓迎の意を表明
するとともに、今回の措置により肥育豚価格の下落がどこまで緩和されるか大い
に注目している。



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