輸出食肉検査制度が改革に向けて前進(豪州)




一度はつまずきかけていた食肉検査制度改革

 豪州連邦政府の検疫検査局(AQIS)によって所管されている現行の輸出向け食
肉検査制度は、96年より抜本的な改革が推し進められてきた。改革の目玉は、
危害分析重要監視点(HACCP)方式に基づく検査体系を構築した上で、AQISの監督
下、現行のAQIS検査官を各と畜企業の職員に置き換えるというもので、既にと畜
場でのトライアルも実施されている。

 改革に当たっては、検疫上の観点から輸入国側政府の同意が必要不可欠である
が、公式打診を受けた米国は検査員の「官」から「企業」への移行により安全性
が確保されないとして、97年11月に、既に受入れ拒否を表明したことから、
改革が危ぶまれていた。


豪州政府は合意が得られるとの見通しを発表

 豪州政府の説明によると、その後、交渉を重ねた結果、98年2月に入って、
1)検査標準について、その精度が従来以上のものであることが客観的に確認さ
れること、2)(企業職員ではない)豪州政府認定の者が可食か否かの検査責任
を負うこと、3)検査のチェック体制を確立すること、4)HACCPなど今後の検査
体系の構築に関して米国政府の食品安全検査局(FSIS)との共同研究とすること、
などを前提条件に改革に向けて米国政府が基本的に合意する方向に転じたとの見
通しを示した。

 受益者負担となっている現行の食肉検査については、食肉業界から、高水準に
ある検査経費が輸出市場での価格競争力を圧迫しているとの非難が強く、制度の
抜本的な改革は現政権の農業政策の中でも重要課題となっていた。5年ぶりとな
った昨年の食肉検査料の大幅な引き上げに際しては、制度改革による将来の業界
負担の軽減を公約しており、米国政府からの合意取付けは政権運営上からみても、
極めて大きな課題となっていた。


改革実現までは依然険しい道のり

 豪州政府は、今回の発表に当たっても、改革の前進は、今後数年間で業界全体
に3千万豪ドル(約26億円)もの支出削減をもたらすとし、経済効果を説明し
ている。しかしながら、米国側提示の条件の中には、検査員の「官」から「企業」
への完全な移行は否定されており、検査料のなかで大きな割合を占める人件費が
当初の見込みどおり削減されるのか疑問な点も残る。また、米国政府サイドは、
あくまでも交渉は継続中であるとの立場を崩しておらず、今後、米国を含めた各
輸入国側政府との交渉によってはかなりの妥協を迫られる可能性もあり、改革実
現までは依然険しい道のりが予想される。



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