改善が求められる肉類の流通・販売体制(中国)




食肉消費増に伴い、表面化する課題

 改革・開放政策がもたらした近年の目覚しい経済発展によって、中国における
食肉の消費は増加の一途をたどっている。96年の食肉生産量は5,915万ト
ン、前年比12.5%増となり、97年の実績見込みも6,200万トン、前年
比4.8%増と伸びは鈍化するものの、国内生産の拡大に支えられて、食肉の消
費は今後も安定的に推移することが予想されている。

 しかしながら、食肉消費の増加に伴い、流通・販売段階でさまざまな課題が取
りざたされるようになってきた。価格面では、食肉生産量の7割を占める豚肉が
依然として小規模農家養豚に依存していることから、供給量の変動が大きく、価
格の不安定要因となっていること。また、品質面では、個人経営のと畜商が増加
したことから、品質劣化した肉の市場流入がみられること。さらに、産業構造の
面では、国営のと畜施設、食肉加工場、冷蔵施設などが大きな負債を抱え、食肉
産業発展の「足かせ」となっていることなどである。


食肉業界の「インテグレーション化」がカギ

 これらの諸問題を解決するためには、と畜・加工部門を所有する企業が中核と
なり、生産分野から流通分野までをカバーするインテグレーション化がカギとな
ると思われる。この生産、と畜・加工、流通、販売の各機能を併せ持つ「集団公
司」(または「総公司」)の利点は、市場動向を勘案しながら供給を需要に的確
に適合させることができる点にある。また、科学研究・開発部門と生産・流通部
門を緊密化した技術管理体系を構築して品質管理を徹底することによって、食肉
(肉類製品)の品質を高めることも可能となる。


期待される国有企業の奮起

 3月5日に開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では、指導部が
赤字にあえぐ国有企業改革を最優先課題に掲げている。食肉産業の分野では経済
活動の活発化に伴い、と畜が様々なルートで行われるようになったため、と畜・
冷蔵設備を持つ国有食肉加工場の操業率が低下し、深刻な状況となっている。

 現在、中国では、食肉の衛生状態の確保、疾病伝染の防止、環境汚染防止等の
観点から、政府が定めた「定点と畜」場でのと畜を推奨しているが、国有企業に
これを請け負わせることにより、国有企業が食肉の流通過程において主導的役割
を果たすことが期待されている。すなわち、「定点と畜」システムとは、各地に
現存する国有のと畜・加工設備を充分に活用して、流通する食肉が一定の衛生基
準を満たすことを保証するものであると言える。また、「定点と畜」が行われる
場所で食肉の卸売り業務を行えば、新規の設備投資を行う必要がないばかりでな
く、流通・販売体制の充実にも寄与するものとして注目されている。



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