減産が懸念される養鶏産業(フィリピン)




養鶏産業は順調に拡大

 フィリピンの養鶏産業は、近年の急速な経済成長を背景とした消費の増加によ
り、拡大傾向で推移してきた。鶏肉の生産量は92年以降、一貫して増加してお
り、96年は45万5千トン、前年比13.9%増となった。また、鶏卵の生産
量は94年に一旦減少したものの、ほぼ増加傾向で推移しており、96年は20
万5千トン、前年比2.8%増であった。

 さらに、97年の鶏肉を含む家きん肉全体の生産量(速報値)は、96年に同
国政府より公表された目標値の95万トン、前年比11.5%増までは伸びなか
ったものの、93万トン、前年比8.1%増となっており、鶏卵についても前年
比8.4%増と増加の傾向を示している。また、97年の生産額は、鶏肉248
億ペソ(前年比9.2%増、1ペソ=3.34円)、鶏卵64億ペソ(同9.1
%増)となり、農業総生産額の10%を占めるまでに成長し、養鶏産業が順調に
拡大を続けていることを示している。


通貨下落で飼料コストが急上昇

 一方、同国の飼料原料の輸入は、95年にはトウモロコシが20万8千トン(前
年の約3.3倍)、大豆ミールが89万8千トン
(同37%増)となっており、国内生産の不足分を輸入飼料に依存している。昨
年7月のタイの通貨バーツの下落に始まった東南アジアの通貨危機により、同国
の通貨ペソも下落したことから飼料価格は急上昇している。それに加えて、エル
ニーニョ現象の影響を受け、同国においては干ばつの発生によりトウモロコシな
どの飼料作物の生産が大きなダメージを受けており、さらに飼料の輸入量が増加
するものと見られている。このため、飼料価格が今後一層上昇するものと見込ま
れており、この結果、鶏肉・鶏卵の生産費は上昇するものと見られている。


政府は関税引下げ等を検討

 これに対して、同国政府は、現在、輸入トウモロコシに係る関税を、35%か
ら0%に引き下げて飼料価格の上昇を抑えようしているものの、通貨ペソの下落
幅の方が大きく、輸入価格はなお上昇している。

 これまで順調に拡大を続けてきた同国の養鶏産業であるが、今年においては鶏
肉・鶏卵ともに、価格の上昇による消費の減退は避けられないものと見られてお
り、生産量が減少に転じるとの見方が強くなっている。



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