USDA、98会計年度EQIP予算配分を発表(米国)




ノースカロライナなど環境問題を抱える州に増額

 米農務省(USDA)は1月26日、98会計年度(97年10月〜98年9月)
の環境改善奨励事業(EQIP)に係る総額2億ドル(約250億円)の州別予算配
分を発表した。これによると、ノースカロライナ州など環境問題の深刻な州に対
する予算配分額は、昨年度に比較して大幅に増額されることとなった。

 EQIPは、96年農業法により新規に導入された事業で、農業生産に伴う環境問
題を解決するため、参加農家に対し、技術支援、財政支援、教育支援に加え、環
境問題改善のための奨励事業を行う事業である。

 具体的には、参加農家が、流水緩衝草地の造成や家畜ふん尿の管理施設の造成
等の環境保全事業を行う場合に、USDAが最大75%まで補助を行うというもので
ある。また、栄養分、家畜ふん尿、かんがい用水、野生の動植物などに係る土地
管理の実施を推進するため、参加農家に対し奨励金が交付される。

 USDAによれば、初年度の97年度は、5万8千戸の農家から申請があり、2万
3千戸の申請を認可したとしている。また、本事業に対する実施要望額は、実際
の予算額の3倍以上であったとしており、本事業に対する需要の高さがうかがえ
る。


EQIPと州の環境保全事業との連携

 今回、98年度の州別予算配分を発表するに当たり、グリックマン農務長官は、
他の環境保全事業に加えEQIPをてことして、自然資源のより適切な管理を促進し
ていることを強調している。

 その具体的な例として、メリーランド州ハーフォード郡では、チェサピーク湾
の清浄化を進める努力の一環として、当該地区で最大の関心事項となっている家
畜ふん尿問題の解決が図られていることを挙げている。当該地区では、EQIPの予
算に加え、メリーランド州農務部も補助を行っており、酪農家に対して、家畜ふ
ん尿貯蔵施設の改善などに対する補助を行っている。98年度予算においても、
チェサピーク湾における毒性のフィステリア(過鞭毛虫)問題を解決するため、
メリーランド州の事業を支援することも盛り込まれている。

 また、ノースカロライナ州では、本年度、ニュース州流域における窒素分を3
0%削減するための州の助成事業(予算額80万ドル以上:約1億円)に対し、
EQIPの同州配分予算(総額572万ドル:約7億2千万円)のうち70万ドル以
上が利用されることとなっている。同州においても、ニュース州における魚の大
量死とフィステリアの発見が全国的な注目を集めている。これらは、養豚・養鶏
経営、都市排水(下水)、農業排水による窒素過剰が原因とみられている。この
ため、当該地域の農家などに対し、家畜ふん尿処理施設の導入などの水質汚染防
止措置を支援するとしている。


用語解説

環境改善奨励事業(EQIP)

 EQIPは、96年農業法により新規に導入された事業で、農業生産に伴う環境問
題を解決するため、参加農家に対し、技術・教育的支援、補助(費用の一部負担)
に加え、環境問題改善のための奨励事業(奨励金の交付)を行うものである。ま
た、2002会計年度まで継続的に予算措置が講じられ、予算の半分は畜産環境
保全対策に使用されることとなっている。

1 補助

 参加農家が、流水緩衝草地の造成や家畜ふん尿の管理施設の造成等の環境保全
事業を行う場合に、USDAが最大75%まで補助を行う。ただし、原則として、大
規模経営体(飼養規模が1,000家畜単位以上)は、補助は受けられない(2
の奨励金の交付は受けられる)。

2 奨励金の交付

 環境汚染を低減させる、栄養分、家畜ふん尿、かんがい用水、野生の動植物な
どに係る土地管理などの実施を推進するため、参加農家に対し奨励金が交付され
る。奨励金の交付を受けるためには、農家は保全計画を作成し、その計画実行に
ついてUSDAと契約を結ぶ必要がある。奨励金の交付は、USDAと生産者との契約期
間(5〜10年)にかかわらず3年を限度としているが、契約者は、この契約期
間内における事業履行の義務を負う。また、奨励金交付に関しては、各州の裁量
に任されており、交付の対象となる事業内容および奨励金単価は州により異なる。

注)「大規模経営体(1,000家畜単位以上)」を畜種別に見ると以下のとおり

 ・肥育牛1,000頭以上
 ・55ポンド(約25kg)以上の豚2,500頭
 ・乳用成牛700頭以上
 ・採卵鶏およびブロイラー30,000羽以上



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