◇絵でみる需給動向◇
ブロイラーの卸売価格は、今年前半の好調な輸出に支えられ大幅に上昇してい たが、8月を境に下落に転じている。ブロイラー卸売価格(12都市平均丸どり価 格)を8月以降週別に見ると、8月第3週をピークに徐々に低下し始め、11月第 1週には、8月の月間平均に比べて11.0%安の64.2セント/ポンドになった。部 位別価格(北東部の卸売価格)では、主に国内に向けられるむね肉が同21.4%安 の177.3セント/ポンドと大幅に低下し、主に輸出に向けられ国内需要が弱いもも 肉は、同25.3%安の38.1セント/ポンドとさらに激しく落ち込んでいる。 ◇図:ブロイラー卸売価格の推移◇
米国産ブロイラーの年間生産量の約2割が輸出に向けられている。このうち、 ロシア向け輸出がここ数年急増した結果、ロシアは94年以降、香港を抜き米国産 ブロイラーの最大の輸出先(97年輸出シェア44%)となっている。しかし、98年 に入って経済危機が深刻化し、それに伴いルーブルが切り下げられた181月以降、 米国からロシアへのブロイラー輸出は実質的に停止している。このことが、ブロ イラー卸売価格が下落に転じた最大の要因と言える。 ブロイラー生産業者は生産調整を行っているが、ロシア向け輸出停止の影響に 十分に対応できていない。9月末の冷凍ブロイラーの在庫量は、前月に比べ1万 18 千トン増の26万 8 千トンになっている。このため、ブロイラー業界は、政府 に対しロシアへの食糧援助に鶏肉を盛り込むよう強く働きかけている。 ◇図:米国産ブロイラーの国別輸出量の推移◇ ◇図:冷凍ブロイラーの在庫量の推移◇
このような状況の中で、USDAは11月16 日、ロシアに対する310万トンの食糧援 助実施について、ロシア政府と大筋で合意したと発表した(詳細はトピックス参 照)。対象となる品目は、畜産物では牛肉、豚肉および脱脂粉乳となっており、 鶏肉は含まれていない。しかし、USDAは、今回の食糧援助の発表に当たり、米国 産鶏肉のロシアへの輸出再開について、現在、さまざまな方策を検討しているこ とを明らかにしている。米国ブロイラー業界にとって、ロシアは最も重要な輸出 市場であり、ロシア向けの援助輸出の実施時期やその規模が国内の価格動向にも 大きく影響することから、この問題に関する今後の動向が注目されている。
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