豪州の牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○経産牛頭数の増加傾向続く


20年ぶりの200万頭台に

 豪州酪農庁(ADC)によると、98年3月末現在の経産牛頭数(速報値)は、前年
を1.3%上回る200万 2 千頭となり、78年以来の200万頭台を記録することとなっ
た。経産牛頭数は、酪農家戸数の減少に伴い91年までは減少傾向で推移したもの
の、92年に増加に転じその後は増加基調が続いている。    

 この背景としては、輸出依存度が高い豪州の酪農にとって、ガット・ウルグア
イラウンド(UR)合意に伴う国際貿易環境の好転への期待などから酪農家の増頭
意欲が高まったことが挙げられる。


減少傾向続く酪農家戸数

 一方、酪農家戸数については、前年度を2.1%下回る1万3千戸となった。酪農
家戸数は、肉牛や羊など他の畜種に比べて比較的生産環境が良好なことから新規
参入者があるものの、中小規模の農家を中心に酪農から撤退する動きも進行して
おり、一貫した減少が続いている。

◇図:酪農家戸数および経産牛頭数の推移◇


拡大傾向が続く飼養規模

 豪州農業資源経済局(ABARE)によると、酪農家の規模拡大が進んでおり、91年
から97年までの 6 年間に、 1 戸当たりの平均飼養規模は116頭から154頭へとお
よそ33%拡大している。ADCでは、こうした動きは引き続きみられるとして、97/
98年については前年から 5 頭増加して159頭になると見込んでいる。

◇図:1戸当たり経産牛飼養規模の推移◇


規制緩和政策による一層の戸数減少を懸念

 豪州では、ビクトリア州が飲用乳の流通規制を廃止した95年以降、飲用乳市場
における流通規制の緩和が進んでおり、99年に当該規制の廃止を予定しているク
インズランド州を残すのみとなっている。こうした中、今年7月卸売・小売段階
の規制緩和が実施されたニューサウスウェールズ州では、酪農家の間で、生産コ
ストが安価な豪州最大の酪農地帯ビクトリア州からの飲用乳の流入を危惧し、生
産者販売価格の下落など将来に対する不安が高まっている。このため、今後の規
制緩和の状況いかんによってはさらに酪農家戸数の減少に拍車がかかることも予
想される。


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