◇絵でみる需給動向◇
EU委員会は10月、98年から2005年までの主要農産物(穀物、酪農、食肉)に関 する需給見通しを公表した。この需給見通しを策定するに当たっての前提条件は、 次の通りである。 1 共通農業政策(CAP)は、現行と同様に適用される。 2 輸入や補助金付き輸出に関するガット・ウルグアイラウンド(UR)合意内容 は、2005年まで変化のないものとする。 3 農業統計などは今年 8 月15日時点を基に策定しており、 8 月下旬に発生し たロシアの経済危機は織り込んでいない。
今回示された需給見通しの中で、豚肉生産量は、今後も域内消費が伸びること から、約1,710万トンから2005年には約1,790万トンと増加する。1人当たりの豚 肉消費量は98年の42.48kgから徐々に増加し、2005年には44.39kgに増加する。こ れにより、EU全体の消費量は98年の約1,590万トンから年率0.8%前後で増加し、 2005年には約1,700万トンになる。 資料:EU委員会 注 1 :枝肉ベース 2 :消費量の( )内は、 1 人当たりの消費量で単位はkg 輸入量は、市場アクセスの改善などによって、98年の6万トンから2001年には 9万トンと増加するものの、それ以降は増加しない。また、輸出量については、 輸出補助金の削減により、2001年まで減少するが、それ以降は変わらない。
一方、現在の域内豚肉需給は緩和している。98年10月の豚枝肉卸売価格(15カ 国の市場参考価格、以下「豚肉価格」)は、前年同月を38.9%(前月を7.5%)と 大幅に下回る100.2ECU(約15,800円、1ECU=158円)/100kgとなり、近年の最 安値を依然更新している(左図参照)。また、各国においても価格は軒並み大幅 に下落している。この要因としては、ドイツやフランスなどの主要国で繁殖用雌 豚頭数が引き続き増加し、肉豚供給が増加していることなどが挙げられる。これ らに加え、8月下旬にEU最大の輸出先であるロシアで経済危機が深刻化したこ とが価格の低迷にさらに拍車をかけている。 EU委員会は需給回復対策として、 8 月 13 日から輸出補助金の約5割引き上 げ、9月28日からは民間在庫補助制度の実施を行ってきたが、10月15日から輸出 補助金をさらに3割引き上げることを決定した。これは、米国の為替レートがEU 各国の通貨に比べ急速に下落した結果、EUが輸出する豚肉の国際競争力が低下す るのを回避するための措置とみられている。 しかし、EUにおける今後の豚肉生産量は、イギリスなど一部加盟国で減産が見 込まれるものの、99年半ばまで増加が続くと予想されている。このため、11月4 日に開かれたEU豚肉管理委員会では、これ以上の需給緩和を防ぐため、繁殖雌豚 のとう汰措置や一時的な授精禁止措置を行うことなどが検討された。
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